第33話 白雪姫とのドライブ



「あっはっは! やっだ~、だから由紀那が勘違いして顔を赤くしてたのね~!」

「いえ、まぁ言葉足らずだった俺の方に原因がありますから……」

「………………」



 現在、デ・ネーヴェを出た晴人と冬木さん、そして奈津美さんは車に乗って彼女らの自宅へと移動していた。


 因みにだが厨房は慌ただしい様子だったので、残念ながら冬木さんの父親に挨拶することは叶わなかった。その旨を申し出た際に奈津美さんから「あぁ! うちの主人すごく恥ずかしがり屋だから別に大丈夫よ〜!」と言われてしまいやや押し切られる様な形で車に乗り込んでしまったが、冬木さんにはとてもお世話になっているのでいつか直接挨拶しておきたい。



「もう、そうならそうと早く言ってくれれば良かったのに! てっきり私ってば、晴人くんが由紀那を泣かせたのかと思ってびっくりしちゃったわよ~!」

「は、ははは…………」

「しっかし由紀那も早とちりするなんて珍しいわねー? いつもなら相手が言った言葉の意味をちゃんと汲み取ってから返事するのに。……あ、わかったぁ! もしかして晴人くんがうちに来るの、実は結構楽しみに―――」

「ママうるさい、運転に集中して」

「えー……もう、はいはい分かりました、お口チャックしま~す」

「ははは……」



 先程からずっと渇いた笑みと声しか出ない晴人だったが、無表情具合に磨きが掛かった、どことなく素っ気ない様子の冬木さんを見るのはなんだか新鮮だった。ほんのりと彼女の頬が赤くなっているのは図星だったからなのだろう。


 もし冬木さんの反応が思った通りの考えならば、とても嬉しい。


 とはいえ、それをこちらが指摘するのは野暮というものだ。

 奈津美さんもそんな娘の様子を知ってかルームミラー越しでニヤニヤと目元を曲げているが、これ以上冬木さんに羞恥心を抱かせるのはなんだか可愛そうなので、晴人はそっとしておくことにした。



(にしても、本当に仲が良いんだな)



 流れる窓の景色を眺めながら、晴人は小さく頬を緩める。


 口数が多い奈津美さんに対し、言葉少なげに返事を返す冬木さん。性格はまるで正反対だが、なんでも言い合える親しい様子の二人を見る限り、どうやら冬木さんの言う通り関係は良好のようだ。


 初対面の時はいまいちピンとこなかったが、よくよく見れば親子なので容姿も似通っている部分もかなり多い。奈津美さんも親という割にはとても見た目が若いので、きっと二人揃って歩けば姉妹に間違われるに違いないだろう。


 思わず晴人はそんな光景を想像して小さく笑いをこぼす。



「ふふっ」

「……どうかしたの、風宮くん?」

「あぁいや、なんだか姉妹みたいだなって思ってさ」



 冬木さんに気付かれてしまったが、別段隠すようなことでもない。なので正直に思った感想を伝えると、次の瞬間、彼女はきょとんとした様子で首を傾げたのだった。



「私とママは姉妹じゃなくて親子なのだけれど……?」

「それほど仲が良いように見えるって事だよ」

「そ、そう……。これは、素直に喜んで良いのかしら」

「勿論」



 無表情ながらも困惑しているような視線をこちらに向ける冬木さんだったが、仲が良い事に越したことはない。


 二人の様子を間近で眺めて間もない晴人だったが、きっと今の関係があるのは、母親である奈津美さんの明るさと支えがあったからだろうと伺えた。


 人見知りで緊張しいである冬木さんだが、人と上手く関われない環境で変に捻くれず育ったのは奈津美さんの影響があったに違いない。



(……ま、それは俺も同じか)



 自分の母親である咲良を思い出しながら、晴人は穏やかな気持ちで後部座席のシートにもたれかける。


 冬木さんの自宅へ向かうまでの暫しの間、こちらへちょくちょく話を振ってくる奈津美さんに対し冬木さんが嗜めている様子を微笑ましく思いながら晴人はドライブを楽しむのだった。


















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執筆していたらいつの間にか文字数が膨らんでいたので分割しました!

次回は明後日更新します!(/・ω・)/

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