影への誘い

喧噪から離れたどこか寂しい小屋の中に誰かの佇む影があった

遠くで野犬だろうか?空しく吠えた声が木霊してはすぐ消える

人影は、辺りを警戒しながら、探索を続けている


「やっぱり噂は噂でしかないよな・・都市伝説なんて、そんなもんか」


俺は呟く・・そうだ、幽霊だの妖怪だのいたら苦労しない

あってせいぜい都市伝説位なものだし、そもそも人に易々と見えはしないのだ

俺は、俯きながら片手でスマホを操作する


ツイッターの画面には最近この寂れた田舎町に起こる怪奇事件の噂が、今日のトレンドに

ずらりと席巻している。まぁ、田舎だからだろう。時折の猟奇事件が起こる位ならまだしも、最近立て続けに物騒な事件が相次いでいる


噂では、事件に巻き込まれた被害者はツイッターの噂の儀式を試して神隠しに遭った後で

行方不明となり、大抵は死体となるか、行方不明のままでいるかのどちらからしい


自分が見て聞いてきた話では、ほとんど死体だと言う事くらいは聞いていた

まぁ死体の状況まではほとんど知らないけど、問題なのはその儀式だ

儀式も内容は意外とあっさりしていて、ツイッターで裏アカを作り

そこで自身の願いを呟くこと


だが、これは多分都市伝説な噂になりつつある話だし、儀式の詳しい内容が

これといって他には何も載ってない事から特有のデマだろうが、


自分が考察した中では被害者には共通点があった。

事件に巻き込まれた被害者達は、事件の起こる前に

ツイッターに、死にたい、等と自殺を仄めかす様な発言を最後に消えていた


「あくまで俺の予測なんだけど、昔から悪い出来事ばかり当たるからなぁ」

そういって一旦、手にした携帯画面から視線を逸らした



「俺だって・・・・」ふいに、溜め息が零れる

夕日も後少しで影を落とすのだろうか、ひどく寂しくなってきた



「これから・・どうしようかな・・」居もしない誰かの気配に怯えながら

自分自身についても、笑えない事が一つある事を思い出す


正直、今の自分の状況の方こそ自分でも理解できない

あてもなく彷徨って、気付けばここへ戻ってきたけども・・



自分にはここ最近の記憶が何も無い

正確に言えば、一日一日経つ度に忘れていってるが正しい気もするのだろうが

何故か最初に覚えていたのは自分がここで目覚めて、傍で見つけた携帯に映り込んでいたツイッターの「噂」と宛先不明からの「DM」

そこには一言、こう書かれていた


「契約者様へ 返却期間が過ぎました

失われた記憶をお返ししますので是非一度当館までお越しください

夕日迫る館で、お待ちしています」

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