偽利愛(義理チョコ)

手児奈

第1話 身支度

やぁ皆 寂しい季節がやってきたぜ

俺は今日だけが猛烈に孤独な男「優」

名前の通り、人に誇るべきなところは何も無い


強いて言うなら、生まれ持った環境のせいか、コンプレックスのせいか

人に流されやすい、まぁ優しいだけしか取り柄がないと言われる男だ


しかもだ!今日この日に置いては全男達にとっては悲しみと憎しみが連鎖する日

そう!それこそが憎むべきバレンタインだ


しかも・・しかもだ!俺が呪って止まないのは、俺の兄貴だ

兄貴の修司は面良し、運動神経良し、器量よし、それでいてほどほどに

女にモテまくるえげつない男なのだ


だから優しさだけが唯一の俺には、何も勝るものすらない

え?何故優しさだけか、自分でそれを言うなよって?

おいおいそれはないんでないかい?

その理由を教えるとするならそれは、兄貴は性格だけがクソなんだ

よくあるだろ?学校ヒエラルキーというか、陽キャは外見や行動はイケメンだが

性格がクソってことは

世の中そんなもん・・・そんなもんなんだもん(泣)


そんな訳で朝は憂鬱だ

仕方なく身支度を開始して、寝室のドアを開ける

洗面所でなんの気なしに、髪をいじってみたり、香水を借りてつけたり、

・・え?バレンタイン意識してるのって?

いや!・・いやいやいや全然ちげーし、いつもやってるし

だって俺?イケメンな兄を持つ片割れの弟だし?

ナンセンスな訳ないじゃないかー(笑)あっはっはっは-・・って

やべー・・これ、父さんの育毛剤じゃねーか!畜生、香水かと思っちまった(悲)

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