悪役令嬢 ~罪の紅茶はいかが?~狂った愛のlabyrinth

手児奈

第一章 Broken World(ぶっ壊れた世界)

ep : 01 孤独の崩壊


孤独な闇にふさわしい雨音が降りしきる

月が映える荘厳なこの異世界にとって夜明けなどなく

幾度となく繰り返される月の光の明滅だけがそこにあった



朝も夜も無い。



むしろ朝と夜があるならば、透明な光がその世界の蒼に混ざり、

中央の樹に降り注ぎ、一定の間だけ中央の樹が薄らと暖かい光を放つ

それが「朝」

そして周囲に霜が降り、冷えて蒼い闇が濃くなっていく

それが「夜」とでもいうべきものだったろうか


その異世界は中央に「命の樹」が植えられ、大地は全体的に浮遊している

斜め後ろには「浮遊城」が並んでいた

どうやら城への入り口は端っこにあるらしく、そこから延々と奥横へ伸びている


ただ蒼い月が映える孤独な世界だった

だが、その時だった



中央に雷を纏った閃光がバチバチと放電を起こす!



耳をつんざくような音を出したかと思うと、ガシャンと甲冑の音が煙の中に木霊する

放電が足下を焦がし、穿ち、蒸発した足下に土煙が巻き起こる中で

ギラリと鈍い光が放たれた


「・・・・ようやく・・見つけた」

凜とした声が響く


「長かった・・・実に」 

悔恨を込めた声・・



「こんなとこへ逃げていただなんて・・見つからないはずよね」

ジリッと力強く足元を踏む


「でも・・もぅ逃がさない」

その瞬間、全身から白い光が雷光のようにほとばしっていた


騎士は睨む

その眼差しに込められた鬼気迫る眼光は、今にも何か爆発するかのようで

騎士は、しっかりと自分の今いる場所を睨み付けた

ついで、入り口を見やる


「もぅ、逃げられないわよ・・」そう言って口をギリッとさせ入り口を開けようと向かう

が、可愛い文字で兎のプレートが立て掛けられてる


「寂しい世界へようこそ、無礼なお客様 でも貴女が願うものはあいにく用意してありませんの

レディの眠りを妨げる無粋な輩はお客として相応しくありませんのでお帰りを」

そのプレートに、まるで侵入者に気付いたかの様に血文字で文字が浮かびあがった


「ふふ・・別に構いませんわ・・お茶会なんて下らない茶番をしにきた訳じゃないから」


「目的を果たせたなら、すぐお暇させて頂きますわ・・要らぬ気遣いは無用です

・・・私の目的は・・」

そういって彼女は心底腹の底から息を吐いた 一呼吸の間を置いて、光の渦が騎士を包む


「貴女の首よ・・リレイズ・・」 けたたましい破裂音と共に、蒼白い炎が包み込んだ

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