第102話 幕間 〜 木村大和
――お前の取り巻き、評判悪いぞ。
――あいつら邪魔だからどうにかしてくれよ。
彼女達がそう言われるたび、俺はかばってきた。
――一生懸命だし、良いところも沢山あるんですよ。
――応援に熱が入っちゃって、周りが見えなくなっちゃったみたいですね。
でも俺だって気付いてる。
常識外れな行動。
自分勝手な言動。
彼女たち3人が、周りからどのような目で見られているか。
でも、彼女たちの行動は俺の応援のためで、俺の事を考えてくれた結果だ。それを無下に「良くない」とか「止めてくれ」などと言えるわけがない。
そう思っていた。
あの言葉を聞く前は。
――陸上部の渡辺さん、親衛隊に嫌がらせされてるみたいだよ。
これは部活連に出たうちの部長が、弓道部の部長に言われた言葉だ。
他人の言葉を鵜呑みにしてはいけないことはわかっている。しかし、最近の日菜乃の行動に合点いくものもが多くあるのも事実だ。
もしそうだとしたら、俺はなんて馬鹿なことをしてしまったんだ?
「ねぇねぇ大和君。次の休みなんだけど、部活休みでしょ?どこか行かない?」
そう言ったのは長嶋梨里。親衛隊のリーダーだ。
足を怪我している俺は日曜日の部活は免除され、療養に徹するように言われている。
彼女達はそれを知っているのだろう。ここのところ親衛隊の3人のお誘いが後を絶たない。
「いや、足を休めなきゃならないし・・・。」
これは、彼女達の誘いを断る時の決まり文句となっている。
「えぇ〜、先週も同じこと言ってたじゃん。」
そりゃそうだろ?怪我の状態が変わってないんだから。
――それよりお前たち、日菜乃に何かしたのか?
「ごめんな、1日でも早くサッカーしたいし。」
さっきから口を出るのは、本当に言いたい事とかけ離れた内容ばかり。
これじゃだめだ。
「それよりさ、日菜乃・・・いや、渡辺さんに・・・。」
「大和君見て見て!面白そうな映画やってるよ!」
俺の言葉を遮って、スマホの画面を俺の顔の前に差し出してきたのは山崎知里。
「そ、そうだな。」
違う。そうじゃないんだ。俺が聞きたいのは・・・。
「じゃあ、明日みんなで行っちゃう?」
今度は三浦玲奈が俺の右手にしがみついてきた。
「ちょっと待ってくれ!」
試合以外であまり大声を出すことのない俺は、自分の声が意図せず大きかったことに、少し後悔した。
3人の・・・いや、廊下にいた多くの生徒たちの視線が俺に集まった。
まずい、ここじゃ目立ってしまう。
皆の視線に自分自身が狼狽えているのが、痛いほど感じられる。
でも今聞かなきゃ、このままズルズルと何の解決もできないまま時間だけが経ってしまう。
俺はゴクリとつばを飲み込み、意を決して言葉を発した。
「渡辺・・・日菜乃さんの事なんだけど。」
見るからに不機嫌な顔をした3人が、僕に視線を向ける。
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