第28話 幕間 〜 岡部勇斗
爽快に走る俺の愛車『岡ちゃん2号』。
乗り手の体力の関係で上り坂は苦手だが、下り坂なら天下一品の走りを見せる。
悪友の晃が瑞希ちゃんから逃げるように帰ってしまい、放課後に捕まえることができなかったので、俺はひとりで駅前のアーケード街まで自転車を漕いで来た。
アーケード街はこの街唯一の繁華街で、パチンコ屋やコンビニ、魚屋、八百屋、肉屋、おばちゃん目当ての服屋などが建ち並ぶ。
・・・。
・・・。
この街唯一の繁華街にあるのが、魚屋、八百屋、肉屋って・・・。
ブランドの路面店が欲しいとは言わない。
せめて、せめて百貨店ぐらいはあっても良いんじゃないのか?!
「おい、勇斗!コロッケ食ってくか?」
馴染みの肉屋のオヤジが声をかけてきた。
コロッケって・・・オシャレじゃないね〜。
「食うのか?食わねぇのか?どっちだ?」
「まあ、食うけどよ。」
軽くお礼を言って、もらったコロッケを頬張った。
いつも通りの美味しさだ。
人口もそれほど多くなく、これといった産業もない。そんな何もない街の商店街なのに、よくシャッター街にならないなと、いつも感心する。
これも商店街の皆さんの努力の賜物なんだろうな。
駅前には一軒のゲーセンがある。
俺はその馴染みのゲーセンの駐輪場に『岡ちゃん2号』を停め、スポーツバッグを肩にかけた。
今日も格ゲー『Strike Fighters 2』略して『スト2』でハイスコアを目指すぞ!
そう心に決め周りを見渡したときに、ふと俺は見覚えのある自転車にを見つけた。晃の自転車だ。
どうやら晃の逃げた先はゲーセンみたいだ。幼馴染なだけあって、やっぱりあいつとは気が合う。
「そんなのいいって!」
親友との絆を再確認し、俺が店舗に入ろうとしたときに聞こえてきたのは、聞きなれた晃の声だった。
晃が誰かと一緒にいる?
俺はとっさに物陰に姿を隠し、名探偵のごとく様子を伺った。
別に隠れなくてもいいんだけど、雰囲気作りのために、なんとなく隠れてしまったのだ。
晃と一緒にゲーセンから出てきたのは、明るい茶色の髪をした女の子。
紺色のスカーフにチェック柄の制服。間違いなく我が校の制服、しかも1年生。
誰だ?誰なんだ?
可愛い子なら誰とでもお近づきになりたいけれど、一度隠れてしまったので何となく声をかけづらい。
そうこうしているうちに、二人の姿はカフェに消えていってしまった。
晃!俺はお前を親友だと思っていたのに、こんなに重大な秘密を隠し持っていたなんて。
親友の裏切りに、俺は拳を震わせる。
よし。今度、紹介してもらおう。
俺はそう心に決め、今日のところは予定通り『スト2』でハイスコアを目指すことにした。
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