さようなら、ジャスパー

 ふと眼が覚めると、ゾラは自分の家の庭に寝転がっていた。


「やっと起きたか」


 ジャスパーの声がしたが、姿はない。きょろきょろあたりを見回していると、ちょんと足に何かが乗った。


「ここだよ」


「やあ、ずいぶん縮んだね」


「君のもやもやは全部吹き飛んじゃったからね」


 ジャスパーは水道の蛇口から這い出てきたときの大きさに戻っていた。ネモの肉球くらいだ。


「パパとママは本当に僕のせいで牛になっちゃったの?」


 ジャスパーは小さな肩をすくめて見せた。


「自分で確かめてごらんよ。僕はもう行かなくちゃ」


「また会える?」


「さあね。会えるなら会えるし、会えないなら会えない。だから人生は面白いことばっかりなのさ」


「さようなら、ジャスパー。答えはくれないんだね。今度会うときは、もっと僕に人生を教えてね」


「さようなら、ゾラ。それは僕に教わることじゃないよ」


 ジャスパーの小さな体はノミのように高く跳ね上がり、垣根の向こうに消えてしまった。

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