忍法、人海戦術!
ただ時間を浪費する、そんな日々が何日か続いたある日。
無限の中からちょうど欲しかったものを、手掴みで取るようなそんな希望的観察案が、出ては積もるばかりのこの現状にうんざりしていた。
こんなちまちましたことをするのは、ワタシらしくない。
裸一貫この身一つで飛び込んで、そして、頭のおかしいふりをして聞くのだ。
「初めまして。そして、初めましてで申し訳ないが、聞かせてもらいたい。あなたは超能力を使えるかい?」と。
考えが固まったら後は、行動に移すのみ。
ということで、ワタシは取り敢えず
とはいえ、相手は不登校の生徒である。いくら学校で待ち構えていたとしても一向に会えない。なので、
とりあえず、模索できる方法としては二つ。
・
・能力を使って家の表札を片っ端から確認する
この二択である。
結局どっちを選んだとしても、一筋縄ではいかなそうだが、何もせず考え立ち止まっているよりはましだろう。
ということで、失敗したとしても一番情報が得られそうな『知り合いや友達を探す』ことから始めるか……いやでも。
このままここで悩んでいてもらちが明かない。なので、今日はここで解散ということで一幕!
一日経って、翌日。
授業も一通り終わってから各々教室から出ていくのを見届ける。昨日の自分が考えた二つの作戦の一つ、前者の作戦を実行するならば今話しかけていくのが定石だろう。
だが、一晩よく考えたら、もっといい方法を思いついたのだ。
それは、
人当たりもいいので、もしかしたら掛け合ってくれるかもしれない。ということで早速、先生のいる職員室へと向かうことにする。
コンコン。
「失礼します、一年一組の
扉を開けて中を観察する。
まだ清掃の時間が終わっていないので、バラバラと先生が座っている中、一番端の机の一番奥にその人物は座っていた。
富樫先生はこちらに気がつくと、軽やかな足取りで職員室の入り口まで歩いてきた。
「全世界君、どうしたの?」
前髪を軽く分ける流行の髪形に、整った塩顔、すらっとした立ち姿、こりゃあモテるねと自分で勝手に納得する。
「ちょっと、
そう言うと、少しではあるが先生の眉が八の字に曲がった気がした。
「うーんと、そうだね……
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、十分後に一階の空き教室へと来てくれるかな?」
「分かりました、では失礼します」
ガラガラガラ、コトン。
これでまずは、第一関門は突破したということで間違いないだろう。そして、ワタシの予想通りだとしたら、このまま先生が協力者になってくれるだろう。
だが、そのためには、しっかりとした理由とそれっぽい動機が必要だ。なので、この十分間にイメージトレーニングをしながら、例の空き教室へと向かうのだった。
来た時に暑苦しい教室だと、話したい事が詰まったり、交渉が決裂しかねないので、窓を開けておく。室内にたまっていた蒸し蒸しとした空気が、外から流れ込んできた風に運ばれて反対側の窓から出ていく。頬をさらりと撫でるこの風は、この季節こそなせる業だろう。
コンコン、ガララ。
「ごめんなさい、少し遅れてしまいました」
時計を見たら、確かに三分ほど遅れていた。他の先生だったら、そんなことまったく気にしなかっただろうと考えると、几帳面な性格だと知れる。
「いえいえ、気にしないでください。では、ここに座って下さい、ワタシは向かい側に座りますので」
先に話し合いの場を用意する事は、交渉をする上で大事なことだ。机を二つ向かい合わせた面談形式のステージで話し合うのだ。
そう、今から行われることは、裏の目的を隠しながら行うディベート対決、そして、その火ぶたが今切って落とされた。
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