4.太陽のリエゾン

あおく煌めいた海が深く深く色褪せて

オレンジロードを掲げる先に

私たちの路を誰もが航れるように

示してゆく太陽


海を隔てたエジプトでは

水を汲む娘が陽炎をかき分け、

一歩、また一歩を踏みしめながら

麻で織り上げた白い服の裾をたなびかせて往く

濃い青空の真下を歩む、真っ黒な瞳に

夜空の破片が確かに見える

悪魔のような盗賊達に出会わないように

明るい窪みを探す


──記憶の砂が告げる

祈る。に似た感情

低い空をひとすじの飛行機雲が描いて

私の心臓を揺り動かす

立ち込める消毒アルコールの匂い

カーテンで仕切られた十四才の苛立ち

人間への恐怖から来る拒絶の角をあなたは丁寧に切り取った

マグネシウムの純度を見るような指先で一分を計り

その日、私は生まれ直した


──娘の瞳が閉じこめた

夜に

溺れてみませんか

どうぞ息を楽になさって

色んなものに、なってみませんか


男に、女に、老人に、子どもに

多分あなたには思い出すだけで

すべて可能でしょう


密やかな月下美人の芳香

ひなげしのうた

スミレのひたむき

ガーベラの飛翔

風のダンスに消えてはまた立ち上る

ギンドロの葉擦れの幻

男に、女に、老人に、子ども

腕を組んで踊ろう

夜を囲み


再びうつろう鮮やかな夏

人々の微動を請う目蓋が

ゆめの中の白い太陽に眩めば

天のクラゲの舞踏会

どこまでも昇ってゆくフィーリング

灼熱のほとりを歩く

水汲みの娘に見せたい空があった


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