ホーリーwithグリーダーズ
まばたき(またたき)
今日の女神の一言「大人しく、死ね!」
おはようございます、本日も業務開始です、なーんて、女神に朝も晩もないんだけど、ブラックよブラック、肉体は疲れないけど頭はそう感じるのよ、まあどうでもいいわ、今日も業務を始めるとするわ。
今日も多分不幸にも死んだ人間がやってくる、選考基準は、まあ今はいいわ。
「ご愁傷様です、あなたは死にました」
「は? ここどこだよ」
戸惑う転生者、うんうん血気盛んだな、そのまま殴りかかったりしたら即殺す。
「天界です、可愛そうなのであなたには転生させる権利をあげましょう」
「おお! やった異世界転生ってやつだろ!」
最近、天使達の布教活動の甲斐もあって、説明が楽で助かるわー。
「はい、能力はどうしますか?」
「じゃあ一番いいのを!」
一番いいのってなによ、もっと具体的に言いなさい…と、この手のリクエストは良くあるから適当に見繕ったらいいわ、飛ばされた後に相手するのは別の世界の担当の神だし、私の姿なんて眩しくてぼんやりとしから、後で文句も言われないわ。
「わかりました、では良い異世界ライフを」
この一連の流れは割とスタンダードな例で正直楽でいい、人間時間で一日に受け持つのは大体10人前後かしら? 全員こんなだったらいいけど当然面倒な人達もいる。
とりあえず今度は次の
その1、初期能力は高め…こんなもの適当にでっち上げれるわね。
その2、荒くれ者はNG…これも良くある条件ね。
その3、転生後の容姿指定…これは転生前と離れ過ぎないように気遣いが必要。
その4、運がいいこと…あー、わからなくもないわー。
その他チェックシートに多種多様な項目があって、それに見合った条件の人間をサーチ魔法で見つけてくる、候補者が数人居れば適合率がS~Eで表示される、だいたいSから選んだら問題ない、一応その中でも死んでも影響が少ないものを選ぶんだけど、よっぽどじゃない限り大丈夫、だって成功して人が溢れ始めた世界達から選ぶし、一人二人死んでも構いやしないわよ。
「じゃあ今日はこの田舎の学生くんでいいか、親がそこそこお金もちで教養あるし、親が金持ちってだけでぶっちゃけ幸運よ、死ぬから残念だけど」
方法は良くあるトラックでいっか、うちのやり方だと天使か無人トラック、無人引いた後は爆発四散か身投げでもさせればOK、天使なら大人しく捕まって獄中で心臓発作でもなんでもして突然死させて魂を回収すれOKよ、なんなら引いた後横転でもしてそのまま直帰してくるし、タフよねあいつら精神が。
「んー、今日は無人でいこっかな」
ぶっちゃけどっちでもいいので気分で選ぶ、たまに天使も選ばないと働かせろと言ってくるけどいいのあんたら? その仕事庇護する人間の殺害よ?
「じゃレッツワイルドトラーック」
指をパッチンすると100mぐらいの距離にトラックが出現して、最近見ないデコトラよ、味気ないからコーティングしてみたの。
それがまっすぐと少年の背後に突き進む、よし、
―――しかし、突然の突風が吹き、少年が道路から田んぼにそれる…!
「なにぃ!? ええいドリフトだ! 横で轢きなさい!」
「うわっ!」
大きな砂埃をあげて、よく見えない…デコトラは横転し…っち、血がついてない。
「面倒ね、
少年の姿を確認すると田んぼと田んぼの間にあるあぜ道に飛び込んだのがわかる。
「な…なんでこんな田舎にこんなドコトラがあるんだよ…!?」
あ、それは至極もっともだと思うわよ少年。
にしてもどうする? 周囲確認…っく、目視範囲じゃないけど他の人間が来てるし別のトラックの召喚は不可能…、でも今やっとかないとコストの高い隕石とか無駄に疲れる夢引きとかスマホに吸い込ませたりしなきゃいけない…!
「あーもう、幸運にも程があるでしょ! この世界の要人指定とかされて死ねないとかついてないわよね!?」
一応人物資料を確認してみるけど、そんな項目は一切ない、そんなこんなとをしてる間にも少年は警察を呼ぼうとし始めている、っち冷静か。
「あぁ、いいわこうなったら力づくよ、どうせ他に人も見てないし!」
女神パワーを理不尽に行使してやるわ、浮きなさいデコトラ!
「……は? はああああああああああああああああああ!?」
「大人しく、死ね!」
5mぐらいデコトラを浮かして少年に自然落下の10倍ぐらいの勢いを付けて叩きつける、道もついでに凹むけどトラックの爆破炎上事故で多分誤魔化せるわ、危険物でも運んでたんでしょう、知らないけど。
「ふー、いい仕事した」
正直コスト的には隕石降らすのと変わんない気がするけど、まあいいわ、迅速な仕事こそ快適な異世界送りライフが実現するのよ、多分。
目の前の召喚陣が光だし、今しがた酷い死に方をした少年が現れる。
「ご愁傷様です、あなたは死にました」
できる限りの優しい笑みをするのがコツよ、慈悲っぽく見せるのよ私。
「…いや今ボクを殺しましたよね?」
「何のことでしょう?」
っち、さすがにバレたか、別にいいわよ、殺せばなんとでもなるもの。
「いやいやいや、さすがにあの殺し方は雑でしょ!? 誤魔化せないでしょ!?」
「記憶にございませんことよ」
こういうのはすっとぼけるに限る。
「あんなデカブツが浮くなんて物理法則、うちの世界ではないよ!?」
「あ、異世界転生をご存知ですか、ならお話は早いですね」
「スルーして進めようとしないで!?」
「ほら、異世界転生とは結構人気でしょう?」
「人気だけど俺まだ結構今生に満足してたんだけど!」
あー、こいつ思ったより充実してたかー、わりと事故なら充実してる人間でも諦めてくれるんだけどなー、あと一部の人間なら喜んでくれるのに。
「大丈夫です、きっと来世でも楽しくやれますよ」
「……苦難とかあってでしょ? なんならあのトラックアタックみたいな攻撃飛んでくる世界で」
「大丈夫ですあんな力技、異世界でもできるのは上位ぐらいです」
「女神様ぐらいな?」
「私ぐらいまで行かなくてもできますよ」
「どのぐらい疲れますか? あれ」
「あなた達で言うと、5kgのお米を運ぶぐらいの疲労でしたよ」
「やっぱり殺したのアンタじゃないか!!」
っち、こいつ賢いな、ちょっとわかりつつノッた私も悪いけど。
「もー、いいでしょ、転生されるんだから実質死んでないのと同じ、ちょっと左遷される感覚で言ってきなさいよ」
「良心は無いんですか!」
「良心? ハッ、人間が勝手に決めたもんで喚いてるんじゃないわよ」
「態度変わりすぎでしょ!」
だってめんどくさくいし、こっちはまだ他に転生者が欲しいって神様が控えてるんだし、遅れたら上の神様に怒られるのよ私だって。
「いいから、ほらとっとと転生者特典リクエストしなさい、あ、最近神様リクエストする人間いるけど、あれはNGね」
「誰がアンタなんかリクエストするか!」
「はいはい、で、どうゆうのがいいの?」
「…どういう世界なんですか……」
よし、諦めて大人しくなったわね、最初からそーしてれば楽なのよ、殺されたんだから最初から諦めてくれればいいのに。
「ふっつーの文明レベルが一昔前ぐらいの剣と魔法の世界よ」
「それじゃあ…」
リクエストされたのは普通のステータス補正と不老効果、さすがに不死をつけるのは向こうの世界の神様がOK出してないと原則禁止なのよね、色々大変になっちゃった事例が多発して。
「それでは良い異世界ライフを」
いつもの言葉を言って、少年を見送る。
「…覚えてろよクソ女神」
最後に一言悪口を残していったわね、あーはいはい、それもう何百回と聞いたわよ、実際仕返しにこれた子なんていないけど。
「もー、一発目から面倒だったわ、次行きましょ次」
あれ? あの子二人目だったんじゃないっけ? まあどうでもいいわよね。
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