2人のご飯

バブみ道日丿宮組

お題:賢い夕飯 制限時間:15分

2人のご飯

「今日も隠れて食べなきゃいけないの?」

「そうだね。僕らはいないものとして扱われてるから、彼らの前で食べることはできない。ほんとだったら部屋にいることも危ないのかもしれない」

「でも、お兄ちゃん。私たちのパパと、ママだよ?」

「それでもだね。彼らは僕らを認識はしない。だからといって近寄ることは危険だ。何をされるかわかったものじゃない」

「お兄ちゃんの傷がそうなんだ……よね?」

「あぁ。今回のは勲章にも近いけれどね。今夜のご飯を入手するためにはしなきゃいけなかった。毎朝お金を置いていってくれれば……こんな苦労もしなくてすむのだけど、それは期待できない。あの人たちは子どもがいるようでいない心境でいる。常に心あらずってところだね」

「ママたちは私たちのこと好きじゃないの?」

「彼らはエリートにしか興味がない。お姉ちゃんを知ってるだろ?」

「うん、テレビとか雑誌とか学校でよく聞く」

「学校のは覚えておかなくていい。どうせ僕らと比べたがるだけの人たちだからね。とはいっても、友だちはいいものだよ」

「ママたちに好きになってもらいたいけど、今は私はお兄ちゃんがいてくれればいいよ。温かいものをいつもくれるもの」

「それだっていつまであるかわからないよ。いい人ができるかもしれない」

「私を全部お兄ちゃんが食べてしまったのに?」

「それでもだね。さぁご飯を食べよう。そしていつものように美味しいお前を食べさせておくれ」

「うん。大丈夫。お兄ちゃんは一緒にいたいから」

「いいこだ。ちゃんと栄養をとって成長するんだよ。いつかお姉ちゃんみたいになれるかもしれない。誰しもが憧れるそんな逸材に」


 …………通信はそこで終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

2人のご飯 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る