モグラの子

バブみ道日丿宮組

お題:死にぞこないのモグラ 制限時間:15分

モグラの子

 ある晴れた空が見える日、そいつは道路の片隅で震えてた。

 はじめは犬か、猫かと思った。

 近づいてみると、見慣れないフォルムだった。

 ハムスターの大きいやつといえば、そんな感じ? 鼻は細長いし、手は水かきのようなショベルカーのアームのような形。毛色は真っ黒でカラスのよう。

 そんな動物いたっけ? と写真を撮り検索してみると……。

 

 もしかしてーーモグラ。


 という結果が出た。

 なるほど、見慣れないわけだ。

 道路脇に放置されてると危ないので、掴んで歩道に置いた。 

「……生きたい?」

 通じるかはわからない。通じたのかわからない。

 でも、そいつは私の方を見た気がした。

 生き物を救うということは最後まで責任を持つことだ。

 そうして私はモグラをハンカチで包み込み、右手で持ち上げる。

 近くの動物病院はどこだったっけ?

 数秒の疑問の支配の後、これも検索すればいいだろうと気づいた。

 わりと動物病院は近く、600メートル先の交差点を曲がったところにあった。知らないだけで、いろんな施設が街にはあるんだな。

 今は感動よりも生命を優先しよう。

「……んっ」

 通学途中の些細な出来事。私の内申点よりも生命が大事。


 動物病院にたどり着くと、すぐに先生が見てくれた。

 どうやら怪我はないらしく、栄養不足により体力を使い果たしてたようだった。

 栄養剤を打ってくれた先生は「学校に行きなさい」と言った。

 でもと反論を述べようとしたけれど、ここにいても私にできることはない。救える手段はもう行った。あとはモグラの生きたいという気持ちしだいなのだ。

 先生は学校が終わるまで見てくれるといってくれた。

 そのため私は一時間目が真ん中に差し掛かった頃登校することが出来た。昼に担任に呼び出されると怒られた。理由を言ったら頭をなでてくれた。

 頬が嬉しさで熱くなった。優しい先生、とっても好き。


 学校帰り病院によると、モグラは元気よく動いてた。

「どうしますか?」という先生の問いに連れて帰りますと答えた。

 そこからはいろんな知識と餌を無料でくれた。今回だけのサービスらしい。

 良かったねとモグラをなでたら、甘えてるのか頭をすりすりしてきた。今日の私みたいだ。

 案外似た者同士なのかもしれない。

 ペットは主人に似るとかなんとか……。

 カバンにモグラをしまうと、私は怒られるだろうなと想像しながら家に帰宅するのであった。

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モグラの子 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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