別れの痛み

バブみ道日丿宮組

お題:犬の天井 制限時間:15分

別れの痛み

 天井というのは生命においては限界値を表す言葉に近い。

 大人になると天井に近くなる。手に届く範囲に近づき、それ以上は近づくことはなく、また離れてく。他の動物はどうだろうか……。わからない。

 おそらく彼らは天井なんてみないだろう。大空の下に生きてる。人間よりもパワフルな存在だ。

「……」

 愛犬が倒れてからずっと天井のシミを見てる。

 いつもであれば、愛犬が側によって甘えてくるのに今日はない。もしかしたら明日もないのかもしれないという。

 そこに『ある』というのはすごく大事なことなんだと、いなくなって気づいた。大事にしてなかったということはない。親以上に愛情を注いだ。それに子どもの頃から一緒だ。兄弟のようなもの。

 でも……僕たちのような寿命はない。

 もうお祖父ちゃんよりもお祖父ちゃんなんだ。

「……」

 今……愛犬は病院にいる。

 何かあれば連絡をくれることになってる。そんな状況下で安心して眠るということはできず、僕はずっと天井を見つめてる。こうしてても何が変わることもない。ただ時間だけを消費してるだけ。

「……」

 今日もったとしても、明日もつかはわからない。

『苦しむ前に死なせてやるのも飼い主の役目である』と医者は言ってた。

 それは正しいことなのだろうか。

 もしかしたらもっと走りたいって言ってないだろうか。

 もしかしたらもっと歩み寄りたいって言ってないだろうか。

 もしかしたら……もしかしたら……もしかしたら。

 頭に浮かぶのは病気になんてならなければという……愚かな考え。

 僕だって病気はする。それが死に直結するものじゃないだけで、死に繋がるものはそこら中に広がってる。

 だったら、それを取り除くことはできないのだろうか。

「……」

 できないのだろう。

 だからこそ、医者はなにかあったら連絡するというのだ。

 とても残酷な世界だ。

 連絡がくれば、それは終わりを意味して、次の日に見にいっても始まりはしない。

 いつか来る時がきてしまった……ただそれだけなのに僕はこんなにも狼狽えてる。

 大事な、大事な存在がいなくなる。

 それはとても残酷なことなのかもしれない。

 僕は……笑ってお別れができる……だろうか……。

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別れの痛み バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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