骨52本目 戦争跡地ダンジョン

 俺とルチャとアルは冒険者ギルド内にある、俺の部屋に帰って来た。

 これからこの部屋は『拠点』と呼ぶ事にする。


「俺はこれから星5の戦争跡地ダンジョンに行く。2人はどうする?」


「どんなダンジョンなの?」「ニャ?」


「情報では、戦争跡地ダンジョンはスケルトン系の魔物ばかりらしい」


「じゃあわたしは家でゆっくりしてるの」


「アルは串焼きが食べたいのニャ!」


「むむ、やっぱりアルと食べ歩きしてるの」


「やったのニャ! 流石はルチャなのニャ!」


「そういえば、そろそろアルの食費でルチャの財布がピンチなんじゃないか? 俺が持ってる金貨を半分、アルの食費として渡そう」


「ありがとうなの!」「ニャッ!」


 金貨を受け取った2人は、楽しそうに拠点を出て行った。


 俺はルチャとアルを見送ってから戦争跡地ダンジョンに向かった。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 戦争跡地ダンジョンに到着。


 そこは荒れ果てた荒野に、ぽっかりと開いた穴だった。


 入り口の門番にギルドカードを見せて中に入る。


 人気の無いダンジョンだからか、他の冒険者は居ない。

 門番は2人居たが、随分と暇そうにしてた。


 ダンジョン内部は暗く、土質の洞窟型だ。

 天井は少し高く、通路は広い。


 俺は意気揚々とダンジョンを進む。


 出現する魔物はスケルトン系ばかりだ。

 情報通り、最高だな。


 ダンジョンのスケルトンは死んだ兵士の成れの果てだ。

 魔族型のスケルトンだから分かりやすい。


 錆びた剣や槍で攻撃してくる。

 鎧だってボロボロの鎧を着ている。

 俺の前では歩く骨密度でしかない。


 余裕でどんどん先に進む。


 コウモリ型、狼型、熊型、猿型のスケルトンも出てきた。


 いずれも脅威ではない、骨密度だ。

 さっさと吸収する。


 ダンジョン内はほとんど一本道だ。


 広い通路の脇に、たまに細い通路がある感じだ。

 広い通路の方を進めば迷わない。


 俺にとっては親切なダンジョンだ。

 どの辺が星5のダンジョンなのか分からない。

 難易度が低すぎる、余裕すぎる。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 10階層を超えた辺りからゴースト系、ワイト系の魔物が出現し始めた。


 サッと吸収したが、やはり魔力量が増えない。

 なので、サッと破壊、瞬殺する。

 まるで相手にならない。


 俺は強敵と戦いたいのだ。


 進化する為に栄養が欲しいのだ。


 スケルトンの数や種類は多いが、強敵は居ない。

 ジャイアントスケルトンも居ない。

 ワイトは火魔法と土魔法ばかりで攻撃してくる。

 吸収しても俺の属性は増えない。


 これは予想外だ、このダンジョンは死んでるのか。

 ただの骨密度ダンジョンだったのか。

 まるで面白くない、骨密度が増えるだけだ。

 いや、骨密度が増えるのは嬉しいのだが、まるで手応えが無い。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 ダンジョン20階層付近で理由が分かった。


 先客が居たのだ。


 聖魔法『滅魔光線』を使うソロの男性冒険者。


 こいつが多数の魔物を討伐済みだったのだ。


 俺はフードを被り、魔法袋から取り出した盾を構えながら、冒険者に近付く。

 滅魔光線を浴びせられた際の保険だ。


 そろそろ声を掛けようかという距離で冒険者が俺に「滅魔光線!」と叫んだ。


 破滅的な光が俺に襲い掛かったが……俺は耐え抜いた。


 体に影響は無い。

 俺は滅魔光線を凌ぎ切ったのだ。


 貴族から貰った最高級装備の数々に感謝だな。


 とりあえず一言くらい文句を言ってやろう。


「おい! 俺は人間だぞ! 冒険者だ! 滅魔光線を放つな!」


「おぉ、なんだ。てっきりスケルトンかと思ったぜ。悪かった!」


「ソロなのか?」


「そう言うあんたもソロか? 俺様みてえな聖属性持ちか?」


「いや、聖属性は持ってない。ここにはよく来るのか?」


「よく来るに決まってんだろ? 俺様は聖魔法使いだぜ? こんな楽にレベル上げが出来るダンジョンは他にねえよ」


「それは確かに……聖魔法使いならアンデッド相手にレベル上げをするのが普通だよな。ああ、名乗るのが遅れたな、俺はボーンだ」


「おう、俺様はブロズだ。よろしくなボーン。ボーンもここでレベル上げか?」


「いや、俺はこのダンジョンを攻略しに来たんだ」


「お、おいおい、それは困るぜ!? このダンジョンを潰されちゃあ、レベル上げが大変になんだろ!? 俺様は人気のあるダンジョンには行きたくねえんだよ! 星目的なら、狙い目のダンジョンを紹介するから諦めてくれよ!」


「正確に言えば、俺はここのボスと戦いたいんだ。どんなボスがいるんだ?」


「ボスはゴッツイゴーレムみてえなスケルトンだぜ」


「ゴッツイゴーレムのスケルトンか。そいつは強いのか?」


「俺様の滅魔光線を8回くらい放てば消滅するレベルだ。めちゃくちゃ強えぞ。そんなのと……わざわざ、聖魔法使いでもねえのに、戦いてえのか?」


「勿論、戦いたい! それは良い情報だ! 強いアンデッドなら大歓迎だ!」


「へえ、ボーンは変わってんな。じゃボスの経験値だけボーンに譲るのはどうだ? それ以外の経験値は俺様にくれねえか? 道中の安全は俺様が保証するからよ。こうして出会っちまったし、話し合おうじゃねえか」


「道中の経験値はブロズに譲ってもいいが、俺も頼みがある。ブロズの滅魔光線でスケルトン系の魔物は骨粉にしてくれないか? 俺はその骨粉だけ貰えればいい」


「俺様にかかればそんくらい余裕だけどよ。骨粉のままだとスケルトンは短時間で復活するって知ってっか? 帰り道が面倒になるぜ?」


「うーん……じゃあ、ここで別れよう。俺はこのままソロでダンジョンを進むよ」


「……しかたねえな! じゃあ共同戦線といこうぜ!」


「おお、分かってくれたか! じゃあよろしく頼む!」


 こうして即席の相棒を得た俺は、ダンジョン最奥へ進む事になった。

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