第27話 パフォーマンス
夜になり、ホムラ達は公爵の屋敷にやって来ていた。本日は記念すべき侯爵令嬢の10歳の誕生日だ。
「はぁ……立派なお屋敷ですね。家とは比べ物になりません」
レーミング領にある我が家よりも遥かに大きい建物だ。流石は公爵様の家。
「おいおい、我が家がショボいみたいじゃないか?うちもかなりデカいんだからな〜」
一般的に家と比べれば明らかに大きいが、公爵の家と比べると見劣りしてしまう。別に我が家が嫌というわけではない。住み慣れた家は良い者だ。
「大きすぎても、迷いそうです。やはり我が家が1番ですよね」
「ああ、そうだろう?」
ビシッとした礼服を着た父様が嬉しそうに答える。正直に言おう、格好いい。
貴族ということは、この様なパーティなどでは礼服を着用する。ホムラも、事前に採寸を行い作られた礼服を着用している。
「似合ってますよ、ホムラくん」
「先生もセクシーですね」
蝶ネクタイを付けたホムラに対してエルメティアが褒めてくる。先生もかなりセクシーなドレスです。背中の開き方とか、けしからんですよ。
「ありがとうございます、ホムラくん。じっくり見て良いんですよぉ?」
ヒュー、刺激が強いぜ。綺麗な背中に目線は釘付けだ。思わず指でチョイッと触ってしまう。
「ヒャッ……ホムラくん」
「あ、すみません。つい……」
「女性の背中を触るものでは無いですよ。私以外にはやらない様に」
先生も寝てる僕の身体を触るものではありませんが、気をつけなければなるまい。先生には触っていいとはまた変態な。
ありがとうございます。
屋敷に入ると、メイドさんの案内で大広間に案内される。中には、多くの人がいた。みな貴族やその子息子女なのだろう。
「レーミング卿、久しぶりだな。ワイバーンの件は進展がありましたかな?」
顎髭を生やしたがっちりした体格の男が話しかけてくる。
「お久しぶりです、グワイラン卿。困ったことに何も見つからないのです。相当の実力者が仕留めたとは思うのですがね」
ホムラが飛ばした石がワイバーンの頭を貫いたのだが、本人に自覚はないが。
未だに見つからないとは、もう領土から出てるのだろうなとホムラが考えていると話がこちらに振られる。
「次男の方か、初めましてだな。俺は、ギロール・グワイラン。伯爵だ」
「初めまして、ホムラ・レーミングと申します。グワイラン様、お声がけ頂きありがとうございます」
父仕込みの礼をとって挨拶する。伯爵とはなかなかにくらいの高い方だ。
「なに、優秀な子だと聞いたからな。随分と魔法の扱いが上手いようだな。娘も会ってみたいと言うのだ」
先生が少し離れた位置でドヤ顔をしている。弟子の評価が嬉しいようだ。だが、娘が会ってみたいと言う言葉の直後、目に火が灯る。何を考えているのだろうか。
「僕にですか?それは光栄です」
まさかのファンだ。しかも娘と来た。これは期待大だ。
「ほら、挨拶せぬか?すまないな、娘は人見知りでな」
グワイラン伯爵が大きいため気が付かなかったが、彼の足元に女の子がいた。見た感じでは自分よりも1つほど歳下だろうか。
「初めまして、ホムラ・レーミングと申します!よろしければお名前を教えて頂きますか?」
膝をついて挨拶する、女性相手であればいつもよりも全力を出そう。伯爵の娘は顔が赤くなった。そして、先生はハンカチを噛み締めている。
「はっ……初め、まして……。ルチール・グワイランでしゅ、あぅ。5歳です」
定番の噛みを頂きましたぁ!ありがとうございます。
可愛い。先生は、なんでずっとハンカチを噛んでいるのだろか?わからぬ。
「ルチール様とお呼びしますね!せっかくですので、僕の魔法を披露させてください」
「ほう?面白そうだな」
伯爵が言う。
ホムラは少しだけ距離を取って、広間の机の上にある紙ナプキンを取る。元の世界のファミレスにもあるような代物だ。
それを持ってルチールによく見せる。
「ただの紙ナプキンです。良く見てくださいね」
「う、うん。紙だよ……」
しっかりと確認してもらう。そして、直後にそれを火魔法で燃やしてしまう。
「あ!」
誰かの声が聞こえた。
「はい、どうぞ!」
紙ナプキンが燃えた直後、燃えた炎の中から綺麗な花が現れた。それをルチールに手渡す。
「あ!ありがとう。おはな、綺麗」
「ええ、綺麗な花です。しかし、ルチール様の前では花も引き立て役にしかなれません」
ふっ!決まったな。周囲の奴らもポカンとしてやがるぜ。
「見事だ……一体、どうやってこんなことを?」
「これが女性を喜ばせるための僕の魔法です」
どんどんキザな言葉が湧いてくるぜ。周囲の人達も驚いてくれたようだ。
先生は、そろそろハンカチが破れるんじゃないですか?
「やるじゃないか、ホムラ〜。しかし、どうやったんだ?見ろよ、ルチール嬢の顔、あれは惚れてるぞ」
下がると、父様が耳打ちしてくる。確かにルチール嬢の顔は真っ赤だ。
「羨ましいですわ」
「一体どうなってるんだ?」
「あの子、どこの家の子?」
他の貴族の子女達がホムラのことを口々に噂している。
パフォーマンスは成功のようだ。アイテムボックスに入れていた花を出しただけの単純なものだが、そもそも〈アイテムボックス〉というスキル自体がそうそう存在しないもの。みんな驚いてくれたことだろう。
「娘も喜んだ様だ、感謝するよ」
「いえ、光栄です」
伯爵も我が子の笑顔は好きだろう。ホムラに感謝の言葉が伝えられた。
後の話は父様にお任せしよう。周囲からは、様々な視線で見つめられているためドキッとしてしまう。
我、かなり格好良くない?と思いながらもパーティの主役登場までのんびりと待つのだった。
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