第26話 国王に挨拶

「お久しぶりです、国王陛下。ローレイラ・レーミング、ご挨拶させて頂きたく参上致しました」


「よくぞ参ったな、ローレイラ。レーミング領の統治、良く行なってくれておる。これからも励んでくれ」


 父様は床に膝をつき、頭を下げている。ホムラもそれに習って同じ体勢だ。お堅い話し方で言葉を発するのは、この国の国王だ。


 現在、王都2日目の朝。ホムラ達は、国王への挨拶にやって来ていた。


 国王は、威厳のあるおじさん的なのを想像していたが、金髪のやや細めの優しそうなお兄さんという印象を覚える。普段はかなりフランクに話すらしい。


 父様が騎士団にいた頃はまだ王子だったらしく、途中で国王が代替わりしたそうだ。かねてから、父様の溢れる才能(本人談)に目をつけていた現国王は、父様を男爵に任命しレーミング領の自治を任せている。


 レーミング領は、位置的に魔物がいる森も近くにあるため騎士団にいた父様にはうってつけの場所のようだ。



「さて、ローレイラ。当然ながら、そこにいるのが?」


「はい、さあホムラ」


「はい、初めまして。ローレイラ・レーミングが次男、ホムラ・レーミングと申します。本日は、陛下にご挨拶させて頂く機会を頂き大変嬉しく思います!」


 挨拶の姿勢などは、父様やミルリルに教えて貰っていた。威厳などは皆無だろうが、6歳なので許してほしい。


「6歳と聞いていたが、随分としっかりした子ではないか。我を前にして、はっきりと言葉を発する子供もなかなかおるまい」


 良かった、褒めているようだ。まあ、中身は20過ぎですからね……


「光栄です、陛下。私にとっても自慢の息子です」


「なに、久しぶりに会ったのだ。部屋を用意する。ゆっくり語ろうではないか」


 陛下が手を掲げて付近のメイドに合図を送る。わざわざ部屋を用意してくださることは、かなりありがたいことらしい。




「ご苦労、下がって良いぞ」


 陛下の言葉にメイドさんが頭を下げて退出する。部屋には、父様と陛下、そしてホムラ自身しかいない。自分の場違い感が凄いが、黙って座っておく。


「ふぅ……、いやーそれにしても久しぶりだな、ローレイラ。全く、相変わらずイケメンな顔でムカつくぜ」


「いえいえ、陛下には、敵いますまい」


 おおっと、陛下の言葉遣いが随分と変わったぞ。父様とはかなりの仲のようだ。


「ハッハッハッ!驚いているようだな、ホムラ。なに、あの様な話し方は面倒でな。見損なったか?」


 急に話を振られる。国王が相手だとやはり緊張してしまうものだ。


「いえ!むしろ親身に接してくださり、ありがたく思います」


「そうか!ふむ、やはりローレイラの息子は兄も弟も優秀だな。どうだ?俺の所に養子に出さないか?上手くいけば国王になれるかもしれん」


「ふふ、ご冗談を。しかし、それならばミレイラに直接聞いてくださいませ」


 流石にジョークよな、と思いながら耳を傾ける。


「ハッハッハッ、あの〈暴姫〉に息子を寄越せと言うか。我の首が飛びかねんな!」


 会話的に〈暴姫〉とは母様のことだろう。そんなにおっかない異名がついてるのかよ……6歳にしてとんでもないことを知った気分だ。


「私も騎士団時代は良く手を焼いたものです」


 2人の関係とか気になるものだ。その内、それとなく聞いてみることにしよう。




「まだ6歳とはいえ、ここまで優秀だ。将来はどうするのか決めているのか?」


 将来の夢的なやつか。元の世界でも子供の頃はよく聞かれたものだ。


「そうですね。やはり魔法を習っているのでそれを活かしたいというのはあります。まだ具体的に決まってないので漠然としていますが……」


 冒険者になりますとか言って許してくれるものだろうか?ローリエ義兄様が家を継ぐことになるだろうから自分はそこまでの役目はないと思っているのだが。


「なに、これからじっくり探せば良い!其方の師匠は、あのエルメティアだ。恐ろしい女だが良き師匠だ。たくさん学んで我が国の力になってくれるとありがたい」


「はい、努力します!」


 ちゃっかり先生のことを恐ろしい女と言っていた。そういえば、先生が脅しをかけているとか言っていたな。


「そういえば、陛下には息子の魔力測定について話をしなければなりません」


 と父が切り出す。ありゃ、話すんかいな?と思うが。



「エルメティア先生とも話し合ったが、国王陛下にだけは伝えておこうと。この国1番の力をもつお方が後ろ盾になってくだされば心強いからな」


「なるほどです」


 陛下が余程のうっかりじゃない限りは話は広まらないだろう。


「しかし、ここまで改まって言うということは余程だろう?もはや予想出来てしまうな」


 そうでしょうね〜、大問題だから報告をするのだ。


「はい、ホムラの魔力測定をエルメティア立ち合いの元行いました。結果は、虹の炎を灯したと」


「は?……わるい、もう一度頼む」


 おや、予想出来ていたはずでは?」


「虹の炎を灯しました」


「マジでか……金位だと思っていたんだが……てことは、エルメティア超えか!いや、普通に不味いな。ホムラ、神に会ったことはないかな?」


「いえ、お会いしてみたいものですが、ないですね」


 あー、転生者の疑いだ。先生も同じことを言っていた。

 実際は、自堕落な神と変態な元神にあっているがな……


「そうかー。しかし、良すぎる人材だな。漏れれば帝国も黙ってはいないだろうに」


「はい。それに数年後には、帝国貴族との交流戦もある可能性があります。家の家からはホムラくらいしか出せません」


 交流戦とはなんだろうか?しかも相手は帝国ときた。これは嫌な予感がする。


「あー、それもあったな。確かに数年後はお前の家からも代表者を出してもらうことになるな」


「ホムラ、交流戦というのはだな。数年おきに行なっている帝国の貴族と王国の貴族の代表5人が集まって先鋒同士から戦っていく試合だ!勝った側の者が残り、負けた側は次の者を出す。大将まで倒せた方の勝ちだ。5人抜きなんてのは見たことはないが、相当の実力者がいれば出来るかもしれん」


「うむ、年齢も15歳以下となっていてな!ホムラが出ることがあるかもしれないな」


 年齢が低いということは、イベントのようなものなのだろう。そこで戦えば目立ってしまう可能性があるのだろう。


「あのー、出ないというのは?」


「それは、難しい。どこの家の者を出すかは、順番が定められておるからな。帝国に文句を言われかねない」


 これは出場が濃厚だ。こうなればバッチリと鍛えておきたい。




「ホムラがいかに大切かはよく分かった。問題が有れば相談してくれ!多少のことは揉み消してやろぞ。何もしでかさない方がありがたいがな」


 揉み消すとかサムズアップしながら国王が言うものではないだろう。後ろ盾になってくれるのはありがたい。


ホムラ達は、国王に感謝を述べて、その後は他愛無い会話をするのだった。

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