第14話 ホムラ対ゴブリン
「ファイヤーアロー!」
ホムラの詠唱の直後、魔法で作られた炎の矢が洞窟の前にいる2匹のゴブリンに直撃し焼き殺す。
「ゴブリン、絶命しましたね。お見事です」
エルメティアの声に、とりあえず上手くいったと安心するが油断はしない。洞窟の中には、まだゴブリンが潜んでいる可能性がある。
ジリジリというのが合っている歩き方でホムラは、洞窟との距離を詰める。魔力を飛ばすというのをやってみているが、まだ精度が足りない。
「ん?わかった。まだいる!……あっ!」
洞窟から出てきたのは、弓を持っているゴブリンだった。
ゴブリンアーチャー。先程のゴブリンより格上の魔物だ。向こうはすでに矢を番えて放っている。
「ホムラくん」
ホムラが、自らの正面に魔力の障壁を張り、矢を防ごうとしたが、自らの障壁に届く前に矢が弾かれる。
障壁を張ったのはエルメティアだ。元々、普通のゴブリン以外は彼女が相手をすると言っていた。
「先生、自分に相手をさせて貰えませんか?相手は、1匹だけです。少しでも経験を増やしたいんで」
普通のゴブリンなどでは、最悪子供数人で殴っても倒せるほどの相手だ。だから、格上のアーチャーの相手をしたいと思い申し出た。
「わかりました。でも、勝てないと思ったら引いてください。冷静な判断が出来ないのは魔法使い失格ですので」
「はい、先生」
エルメティアの言葉に応えてホムラは、杖を構え直す。その間に、アーチャーも矢を放ってくる。
「魔力障壁!」
ホムラの魔力障壁はしっかりと矢を弾いている。これまで、師匠の魔法を相手に弾く練習はしていたため、ゴブリンアーチャーの矢も弾けると思っていた。
実の所、ホムラの魔力障壁よりも内側。ホムラの身体に近い場所にエルメティアが魔力障壁を張っているのには気づいていた。もしもに備えて守ってくれているのだ。
優しい先生に感謝しないと!
もしもの備えをしてくれる先生に感謝しつつ、絶対に自分の障壁を破られるものかと矢を弾きつつ距離を詰める。
「グギ、ギャギャァ!」
矢を撃っても無駄だと気づいたのだろう。ゴブリンが逃げるような素振りを見せる。だが、その前にホムラが魔法を放った。
「ファイヤーウォール!」
炎が壁となり、あっさりとアーチャーを取り囲む。360度、あらゆる方向から迫る炎に逃げる場所はない。
ホムラがシュッと杖を振ると、炎が収縮しゴブリンアーチャーを飲み込むのだった。
「今回の目的は充分に達成しました。さっさとゴブリンを回収しましょう」
「ふぅ……良かった。緊張しました」
大丈夫だとわかっていても、やはり初めての体験は怖いものだ。昨日は、緊張してあまり寝付けなかった。
「無事に魔物との初戦闘も終わりました。新人冒険者よりも実力があると思いますよ」
「数が少なくて良かったです。それにしても、冒険者かぁ。それだけの実力があります?」
冒険者になってみるのも悪くないと思う。異世界転生の醍醐味ともいえよう。
「ええ、冒険者は10歳から登録が出来るようになりますが、6歳のホムラくんは10歳の子達に並ぶ、それ以上の実力がすでにあると思います」
「先生の教えが良いんですよ。じゃなきゃここまでやって来れません」
「うふふ、あなたが弟子で誇らしいです。さて、マジックポーチ」
長い耳が揺れている。嬉しかったのだろうと思いたい。
エルメティア先生は、エルフの出身らしい。大抵のエルフは森で暮らす者も多いが街に出る者もいる。先生もその1人だ。気がつけば、国家魔法使いになっていたとのこと。
マジックポーチという先生の腰につけられているポーチがあっさりとゴブリン達を吸い込んだ。
魔道具とは便利な物だ。魔道具を作ることが出来るスキルを、持つ者が作っているのだがそのスキルがあるだけで勝ち組だ。
そうそう市場に出回ることはないらしいが彼女ほどの人物になれば持っていてもおかしくはない代物だ。
「魔石が取れるので、ギルドに売ってしまいましょう。それと、ホムラくん感じてますか?」
「え?……あ、はい!」
と言いながら杖を構える。
ゴブリンがこちらに向かって来ているのが魔力に引っかかって気づいた。のんびりと話をしていたからだろう。
一瞬、「感じてますか?」とか言うから誤解してしまった。決していかがわしいことはしていない。
「ホムラくんは、充分頑張りましたし休んでいても良いですよ?」
「いえ、やらせてください。まだやれます!」
ここは、少しでも多く戦って経験を積みたい所だ。
「わかりました。では、そちらは任せました。危なくなったら助けますので」
とエルメティアは、ホムラに背を向けて反対側のゴブリン達を見る。
「さーて、行くぞ!」
ホムラが魔法を発動しゴブリン達に放つ。
結果は圧勝だった。エルメティアなど、一瞬でゴブリン達を倒し切りホムラの様子を見ている余裕さだ。
ホムラも無事にゴブリンを倒した。魔法で遠距離から仕掛けられるのはなかなか良いものだと思うのだった。
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