第12話 パーティの話
ホムラは困惑していた。確かに、自らが所持するスキルは火属性のみだったはずだ。
「なら、この黒い炎はどうなってるんだって所だな」
すぐさま手の上にあった黒い火を消して周囲を見回す。ホムラを見ている者は誰もいないのが幸いだ。
「これって、黒属性だよな……でもどうして使えるんだ?」
後天的にスキルを得ることが出来たのだろう。そもそも、後天的にスキルを得ることが出来るのだろうか?明日、それとなくエルメティアに聞いてみようかと思う。
「今日、複数の属性のことについて聞いたばかりなのにこれか……もう黙っとこうかな」
無理やり結婚とかさせられるのは、遠慮したいなと思う。この国ではそうそうないこととはいえ。
これ以上は、集中が続かないので家に戻ることにする。のんびりとお風呂にでも入りたいなと思う。
「お、ホムラ!一緒にお風呂に入らないか?」
「父様とですか……母様がよかっなぁ」
最近は、良く父にお風呂に誘われるものだ。一緒に入ってくれる人がいない様だ。
「水臭いなぁ!ほれ、行くぞ」
5歳の身体などあっさりと持ち上げられて風呂場まで連れて行かれてしまう。仕方ないので一緒に入ってあげることにしよう。
「よし、行くぞ!」
あっさりと服を脱ぎ去り、風呂場に向かう父。自分しかいないから堂々としているのは納得だが、たくましいものだ。
「エクスカリバーかよ」
父様がエクスカリバーを抜刀している。まさしく聖剣だ。自分の小刀もいつか聖剣になるだろうか。
「なんだ?エクスカリバーって」
「とても立派なものです」
さっさと身体を洗ってしまおうと風呂場に入る。父と2人並んで頭や身体を洗っている姿は、微笑ましいものだ。前までは身体を洗ってもらったりしたが、6歳にもなると自分で洗う。たまに母様やレレ母様に洗ってもらっているのは秘密だ。
「ふぅ……さっぱり」
湯船に浸かりぐでーんと伸びる。湯船は広いし自分にも丁度いい段差があるため最高だ。
「さて、気持ちいいのでここで一曲」
「いえ父様、結構です。下手ですもん」
父様の歌はなかなか聞いてられるものではない。なかなかのイケメンではあるが歌はゴブリン並みだと騎士団では馬鹿にされたらしい。
「そうか、残念だ。そうだホムラ、再来週なんだが王都に行くぞ」
歌については、残念そうな顔をしていたが、すぐに切り替えてくる。それにしても話題が急だ。
「再来週なら、魔物との初戦闘も終わった後ですね。なら大丈夫です。それにしても、王都に遊びに行くんですか?」
ホムラ達が住む、ここレーミング領は王都からは距離がある場所だ。わざわざ王都に行くというのは、何かあるのかもしれないが、出来れば旅行とかであって欲しい。
「いや、親しくさせて貰っている公爵の娘の誕生日でな。パーティを開くとのことだ。ホムラは、まだパーティには出たことがないだろう?だから、今回はお前を連れて行こうってわけだ」
「パーティですか、僕はまだこの領を出たこともないので不安も多いですが。それも必要なことですものね」
一応、貴族ではあるため公に場に顔を出すことも必要なのだろう。義兄である、ローリエもすでにパーティには出たことがあるが、そこでかなりモテたようだ。
羨ましいの一言だ。
「ホムラは、話が早くて助かるよ。ホムラの顔見せも必要だからな。モテたら良いな!そうそう、俺が初めてパーティに出た時は……」
「その公爵様の娘さんは、何歳に成られるんです?」
父様のモテ話を聞いても仕方がないので、無理やりスキップだ。人のモテた話しなど聞いたところで面白くない。
「ああ……、10歳だ。この国では、10歳の誕生日は特に重要視していてな。公爵家ともなれば盛大な祝いになるんだよ」
「歳上ですか。マナーも覚えないとですね」
相手が公爵家では、無様を晒すわけにもいかないだろう。
「お前は6歳なんだから、そこまで気にしなくても良いけどな。王都に向かいながら簡単に教えるとするよ」
「ありがとうございます!パーティはともかく王都に行くのは楽しみです。張り切って魔物を倒して、来週の訓練を終わらせたいと思います!」
眠くなってきたので、さっさと寝ようと思い風呂から上がる。父様には先に失礼しますと言って、風呂場を後にした。
「あいつ、しっかりしてんなぁ……流石は俺の息子か」
ホムラが風呂場から去った後で、父ローレイラは呟くのだった。
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