第37話 特殊部隊・ガリレオ
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廃墟のビルに戻り、勝手に持ち込んだホワイトボードを使って情報をまとめることにした。秋葉原の時に赤い液体を飲んでから、俺は発光せずに常に能力を使えるようになった。魔法陣も出現しない、そのため熱反応も起こらなくなった。
だから俺の居場所を衛星から特定するのは困難になったはず。
こうやって能力を使って感覚を研ぎ澄ましている時が1番集中できるため、周囲の情報を頭の中に入れつつも自分のことを考えてみよう。
まず警視総監の情報によると、さいたま警察署に薬物使用者が潜り込んでおり、そこの全員がイメータルという宗教組織で宗教活動をしていた。
だから、警察全体が腐っている訳ではなく、イメータルの関与している範囲が腐っていると考えた方が妥当だろう。警察全体を金とかで買収するなんて現実的じゃないしな。そこら辺の人達が田島やミチルの件に関わったんだろう。
"1. イメータルを調査する"
それに伴って、赤井という人物が巻き込まれた事件についても現地に行って調査しよう。薬物使用者は特殊な爆発を起こすから、独特な跡地が残っているはず。影も残っていたりするから……見ていて気分が悪くなるが。
"2. 現地調査"
続いて、SoulTについてだ。4人組か、彼らは世界に宣戦布告をしてから表には1回も出てきていない。といっても彼らは今もなお、裏で薬物使用者を大量に生み出して世界の転覆を狙っているんだろうな。仮面のせいで顔は見えなかったが、喋りの特徴からおおよその特定はできるはず。
前に会った時、彼らは「愛する人や親を殺された気持ちなんて分からないだろ」と言っていた。それから繋げて日本政府に復讐がしたいのだろうが、もう少し手段なんて残されているはずなのに……いや、待て。
イメータルの本拠地を特定しつつ薬物使用の証拠を集め、そこから乗り込んで逮捕していけば、単純に物事は収束するんじゃないか。SoulTとイメータルが繋がっている可能性もある。あくまでも憶測だが、試してみる価値はあるんじゃないか。
"3. 薬物の出処を調査"
というか、俺の仕事じゃないから知らないだけかもしれないが、JDPA_Dもしくは警察のどちらかが既に薬物の出処を掴んでいるはず。調査中かもしれないが、何かしら有力な情報があるはず。おかしいだろ、薬物使用者だけを捕まえて出処を確かめないなんて。
まぁ、薬物使用者という重要な証拠は戦闘後に勝手に爆発して消滅するから、聞けないというのもある。
"その他: 米国の薬物使用状況、過去の薬物使用者の叶えた夢一覧"
それと、大事なことも調査しなくちゃ。
それは、力をどこで手に入れたのか。
ショウは米軍の秘密的な実験に自ら志願して、それで補強能力を手に入れた。普通の人間が翼を装着してもGに耐えられずに気絶してしまうが、補強されたショウなら可能。
だが、俺は自身がどういった能力を持っているのか知らない。今のところ判明しているのは、戦闘能力やジャンプ力や速さの強化、第六感全ての強化、空間把握能力、記憶力や計算力の強化。こんな感じで、普通の人間が持っている能力の全てが進化しているようにも考えられる。
とりあえず、ペンのインクがもったいないから、後は脳内で考えよう。証拠を隠滅するためにホワイトボードの文字を全部消して、折り畳んでからリュックの中に入れた。もうそろそろで夜が明ける。それまでに家に戻って、また出勤しなきゃな。
"4. 俺の持つ能力とは"
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一度家に帰り、何もなかったかのように出勤すると、STAGE本部内がザワザワとしていた。入ってすぐの部屋に設置されてある巨大なスクリーンには、"イメータル"という文字が大きく表示されていた。間違いない、あの宗教組織の名前だ。
「星田、イメータルの本拠地が特定された」
彼はもう既に翼のスーツを身に纏っていた。戦闘準備は整っているみたい。他のSTAGEの隊員も、拳銃や盾を奥の倉庫から取り出してきている。やはり、ここから大規模な戦闘が行われるみたいだ。相手はスクリーンに表示されているとおり、イメータルか?
俺はショウからタブレットを受け取り、現状を把握しようと試みた。
「先日の地震でイメータルの建物にヒビが入ったようだ。イメータルの本拠地は特殊な金属で囲まれていて、熱を通さないようになっていた。だから修行の一環として薬物を使用させても検知できなかったんだ」
タブレットに映されているのは、例の熱を通さない特殊な金属。専門の知識を持っていないからよく分からないが、化学式は何行にも渡って掲載されている。そこまで複雑な化学式は初めてだ、となると金属も複雑な構成なんだろう。
「それでついさっき、そこから熱反応が確認された。今から突入するが、これは機密案件だということで、STAGEが主導となって戦うとの指示あり」
前回もさいたま警察署のお偉いさんの過半数が、イメータルの一員であり薬物使用者であった。もしかすれば警察内にはもっといるかもしれない。だから安全が確保されているSTAGEのメンバーが主体になって戦うのも理解できる。警察よりはクリーンな組織だから。
俺はショウから新しいイヤホンを受け取り、作戦の概要を聞いた。
「単純だ。薬物使用者をチップのスタンガンで捕らえる。STAGEと一部JDPA_Dの戦闘可能隊員で構成された班で制圧し、調査班で中を探索する……とだけしか伝えられていない」
ショウでもこれだけしか伝えられていないとなると、作戦を考えたのは誰だろうか。JDPA_Dでイメータルの息がかかってないとされている隊員もこの作戦に参加するみたいだが、本当に大丈夫なのか。
戦闘可能隊員というのは文字通り、戦闘が可能となっている隊員。JDPA_Dは過半数が該当する。逆にSTAGEは技術者も学者も隊員として活動しているため、戦闘不可能隊員として区別しなければならない。というか、STAGEの隊員は殆どがJDPA_Dから派遣された分析官であるため、戦闘員は6人しかいない。
俺とショウ、瀧口さんと目黒さん、警察官の坂田さん、分析官兼JDPA_Dの隊員である北口雷斗さん。たった6人、これで作戦の遂行は難しいため、JDPA_Dのとある特殊チームがサポートしてくれるらしいが……大丈夫なのか?
「変な心配はしなくていい。作戦を考案したのは警視総監だ。警視総監率いる特殊部隊、その名も"ガリレオ"……薬物使用者を素手で倒したことのある最強組織とも聞いた」
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