アングラVRMMOを楽しみます
タスク
第1話 プロローグ
「……っ!これは!」
ゴールデンウィークに入り、大学は休みでこれといってすることもなく、ベッドでゴロゴロしながらスマホでゲイ向け出会い系掲示板を眺めていると掲示板のテーマにそぐわない書き込みが目に留まった。
その書き込みに心当たりがあった俺は思わず、張られたリンクをタップする。
するとページが移動すると同時にファイルのダウンロードが始まった。
そのページの先頭には大きくタイトルと煽り文句が掲載されていた。
『another・reality・online』
これはゲームではあるが決してゲームだと侮ってはいけない。
フルダイブ式VRゲームが世間に出回り始めて十数年。
現在のVRゲームではフルダイブ式ではあるが完全再現されている感覚は視覚と聴覚だけで触覚は触れているのがわかる程度だ。
その他の感覚、痛覚は当然ながら、味覚や嗅覚もブロック。温度や風を感じることもできない。
ブロックと表現したのは意図的に再現していないからだ。そもそもフルダイブ式VRゲームが市場に出始めた当初は全感覚を再現したゲームが出回っていた。もちろん痛覚は9割以上カットして衝撃を感じる程度の再現ではあるが。
しかし、そのゲームは魅力的過ぎた。おいしい料理が太ることなくいくらでも食べられる。現実にはない魔法が使える。モンスターをこの手で殺す感覚が味わえる。
それらに魅了された人達の問題が少しずつ世間に知られるようになった。ゲームの中で食事をすることで満足した人が現実で食事をせず、栄養失調で救急搬送される。魔法に魅了された人がゲームを止めず、強制終了されるたびに違うゲームへと移り、ゲームの世界から出てこないまま衰弱死する。
そして事件が起きた。モンスターを倒すことに魅了された男が現実で人を殺す感覚を味わいたいと通り魔事件を起こした。
それからすぐフルダイブ式ゲームはゲームソフト側に感覚再現の規制されたが、ハードであるヘッドギアには適用されず、全感覚を再現できるスペックを保持している。これはヘッドギア会社曰く脳波や体を動かす電気信号は複雑に絡みあっていて全感覚を再現できるスペックを保持していないと正確に視覚、聴覚、触覚だけの再現と触覚の制限ができないからだそうだ。
この規制は各国が取り入れ、全世界に広がっていった。
なぜ、こんな回想をしているかというと今見ている『another・reality・online』は全感覚を再現しているゲームだから。
『another・reality・online』通称ARO。アングラ系フルダイブ式VRMMORPGで運営もサーバーも日本国外にある。規制は各国が取り入れ、全世界に広がっていったといったが当然地球上すべての国が取り入れたわけじゃない。中には制限を取り入れていない国もある。AROはそんな国の中で運営が行われている……らしい。
らしいというのもAROの情報は噂話をネットで見かける程度しか出回っていない。
噂曰くAROは痛覚こそある程度制限しているものの全感覚完全再現で、制限もかなり緩くそれなりの痛みを伴う。アバターは陰部まで再現していて性行為も可能。時折掲示板などに張られるリンクを運よく見つけられた人間がソフトをダウンロードできる。
運営については有志が規制を取り入れていない国で会社を立ち上げて運営している。だったりハード会社がヘッドギアの性能テストや脳波測定のために開発し、プレイヤーで実験をしている。だったりそれらしいものや眉唾ものまでいろいろな噂が出回っている。
そんな噂程度の情報でも俺はそのゲームに惹かれ、本当にあるならプレイしたいとずっと思っていた。
開かれたページには運営についての記載はない。というよりページにあるのはタイトルと煽り文句そして基本プレイは無料で課金要素があり、課金要素にはキャラクタークリエイト時限定の物もあるということだけだ。
ダウンロードが終わったのでデータをヘッドギアに移し、ソフトをインストールする。
その間にチャージ式バーチャルクレジットカードを発行してある程度の金額をチャージしておく。
「偽物かもしれないし、普段使いのクレカ情報を入れるのは怖いからな。」
ヘッドギアにクレジットカード情報を保存し、インストールが完了したことを確認して装着する。
「それじゃあ、ゲームスタートだ。」
思考操作でインストールしたゲームを起動すると意識が遠のいていった
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