もし、もし。
ルナナ
第1話
もし私があの時「空」を選ばず「地」を選んでいれば、きっと彼の想いが理解できるのだろう。
もし彼があの夜「知」を選ばず「天」を選んでいれば、彼はここで終わることなく一人で前へと進むことができたのだろうか。
私は人ではない。私はあの時、空を飛びたいと願い「自由」を選んだ。私には流れ続ける血を止めることができたというのに。一度きりの願いを自分の「運命」に使ったのだ。
彼は人だ。「血」を知る彼は「天」を選ぶことができたというのに、彼は私と生きるために「地」を選んだ。広すぎる空では離れ離れになってしまうからと。
人から遠く離れた私は彼の機敏がわからない。けど、彼はそれでいいと言う。君には自由で居てほしいからと。そして地に這いつくばる私を空へと連れて行ってくれと。彼はそう私に告げる。
私は彼に言う。私はこのままでいいのだろうか。あなたに何も返せていない、と。私は「自由」だ。彼を乗せて運ぶか私の自由に彼を付き合わせるしかないのだ。
それでも彼は何度もそれでいい、そのままがいい。と答える。地を選んだ私を比翼の鳥にできるのは君しかいないのだと。それを言われて私はようやく気が付いた。けれどその言葉を表現する方法を私は知らない。
彼は私に何度でもそのままで、と言う。私も恥ずかしいから知らないことにしてしまおう。なぜなら私は自由を受け止める器なのだから。と顔を少しだけ朱に染めて言った。
じゃあ私はいつものように彼を空に運ぼう。いつまでも、どこへでも、彼と一緒に空へと飛び自由で居続けよう。
私は彼の想いがいまいち理解できない。けれど私が空である限り、彼が地である限り、私、いや私達はきっと永遠でいられるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます