独りよがりの創作考

二河白道

才能論〜私に才能はありますか?

「私に小説家の才能はあるのでしょうか?」

 小説家を目指す人の中には、こんな質問を、信頼する誰かに投げかける者がある。

 尋ねられた方は、どれだけ下手な小説を読まされても、

「あなたに小説家の才能はない」

 と断言することは、まずない。

 目にした小説が素晴らしければ、

「あなたには才能があるかも……」

 と答える場合もあるだろう。

 親しい者なら、才能の有無などわからなくても、

「すこい才能!」

 と言ってくれるかもしれない。

 ただ、いずれにしても、自分に小説家としての才能があるか否かをたずねる者には、才能はない、と断言してよい、と私は思う。

 もし、「ない」と断じられたら、さっさと諦めて方向を転換するのか?

 ひょっとしたら、「ある」と言われて安心したいと思っているだけなのではないか?


 作家の才能を問われたある小説家は、

「書き続けること」

 と述べていた。

 才能の有無を気にする前に、とにかく書き続ける。

 誰がなんと言おうと自分には才能があると確固たる信念を持って書くか、書かねばならぬ何モノかを胸に秘めて書いているのか、とにかく書き続ける。

 書き続けることができるほどの何かを己の中に持っていること。

 同時に、それは、他者の評価に左右されないものでなくてはならない。

 才能のない者ほど、己の才能の有無にこだわり、誰かに保証してもらわなければ、安心できないのだ。

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