ぼくらは時代劇から言葉を学んだ!

二河白道

蟻の穴から堤も崩れるという喩えもある。

 悪家老や悪代官、悪奉行などが、悪巧わるだくみの進捗しんちょく状況について家来けらいから、正体不明の人物(実は調査のために動いている主人公)がうろちょろしているけれど、たいしたことはございません、という報告を受けたときに、この台詞が使われます。

「どうも気に入らんな…… ありあなからつつみくずれるたとえもある。用心するに越したことはない。そやつから目を離すな」

 あるいは、

「蟻の一穴いっけつということもある。油断はするな」

 などと言うときもあります。


「蟻の穴から堤も崩れる」

 元は、

千丈せんじょうの堤も螻蟻ろうぎ螻蛄けらと蟻)の穴よりついえる」

 という、中国は戦国時代の韓非子を出典とする言葉で、

些細ささいななことでも油断すると大きな災いになること」

 という意味を表しています。


 本来なら、正義の味方である主人公が口にしても問題はない言葉ですが、手前どもと違って正義の味方に油断などあろうはずはないのか、時代劇ではもっぱら悪家老や悪代官、悪奉行の常套句じょうとうくになっております。

 そのせいかどうかはわかりませんが、現代社会で、

「蟻の穴から堤も崩れるという喩えもある。細心の注意を払ってプロジェクトを進めてくれ」

 と、部下に言う上司はいらっしゃいません……

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