人を殺めることで生活するひと組の男女が、なんとなく映画の真似をして、海へと旅行するお話。
青春もの、と言い切ってしまっては語弊がある気もしますが、でも青春の物語です。十八歳の青年である主人公と、その仕事仲間である二十代半ばか後半の女性。後者がやたらと「構いたがり」であるのに対し、主人公はひたすら冷淡であるなど、実質的には姉弟のような関係というべきかも知れません(主人公自身は認めないであろうものの)。
映画の真似をして海へ向かう、という、行動だけを見たら爽やかな物語なのですが。そこにふたりに共通のバックグラウンド、「地下社会の住人として人を殺して生きている」という事実が働き、まったく映画のようにはいかない——という、タイトル通りの〝出来損ない〟感がひしひし伝わるところが素敵でした。
なかなか理想の通りには行かない、いわば〝徒労〟としての青春。ある意味では非常に現実的な光景。しかし本作の場合、ただそのままで終わるわけではないところが好きです。最後、結びの一話で示された、小さくとも確かななんらかの変化。その前向きさが嬉しいお話でした。