小さな町のホヌ

月野夜

小さな町のホヌ

 自室のテレビで、夕方の報道番組を眺めていた。


 テレビに映るニュースキャスターが、殺人の容疑で近所に住む男性を警察が連行したと伝え、キャスターからその男性へと画面が切り替わり、映し出されていた。


 突然のテレビの報道に驚き、それと同時に戸惑いを覚え、「まさか」という思いが込み上げてくる。確か、俺は、昨日この男と話をしたはずだ。


 いつものありきたりな様子で、「そんなことをするような人に見えなかった」とか、「無口な人で、でも、挨拶はちゃんとしてくれてました」などと、男に対する近隣の住民の印象なども同時に伝えられていた。




 俺もその住民たちと同様、あの男が人を殺す動機があるようには見えなかった。


初対面の人間に抱く感情としてはオーソドックスな所だ、確かに、「死にたいのか?」と言われたが、「殺すぞ」と言われたわけでもない。


 俺は、記憶の糸を手繰りよせるため、一昨日からの出来事を思い返した。テレビはいつの間にか明日の天気予報へと変わっていた。






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