第22話 友達

魔法はやりにくい。初っぱな出来たから、次の日もできる何て事はなく、また知識を詰め込んだからと言って出来るなんてものでもない。

完全な感覚とか感触とか、その辺のあるけど、ないような、普段から感じてるけど曖昧な。そんな、スピリチュアルな物を掴むような作業なのだ。

だから、それを制御しろとか、そういう意味不明な事がいやになったからこそ、今日の実技の講義は逃げ出してきたわけなのだが。


この学校にも以外とそういう生徒はいるもので、俺は息抜きとかけて、楽しい事を絶賛真っ最中なのだ。


「あー、気持ち」


めったに人の来ない西口の階段裏。俺は涙黶の女と□□□□。


「やば、シャノンの□めっちゃ□□□」


「今日も抜け出してきて良かったの?」


「いいんだよ。あんなわけわからん授業聞いても意味ないし。それよかシャノンの方が大事なんだって」


「それ、誰にでも言ってるんでしょ」


「いや?シャノンだけだって」


「うそつき」


シャノンが□を動かし、□□□□と動く


「あ、□□い、□□い。□□□□」


□に出すはずもなく、速攻で□□、□□□と□□を□に一通り□□□。

それが終わると再び□□をする。


「好きだよ」


「うん。私も」


□□目で見つけた奴とは言え、かなり可愛いので最近だとシャノンだけが俺の癒しだ。


「□□、□」


「□□、□□」


キーンコンカンコンカンキンコンカーン


もう一度□□□□□□□としたところでチャイムがなる。


「やべ、次の授業いかないと」


「良いじゃん。もっとサボろうよ」


「ダメだって。お前もちゃんと授業出ろよ」


「もー。ヒサは変なところで真面目だよねー」


何か言ってるが、□□もの□□たので俺は素早く退散した。


◇◇◇


昼休みの食堂、男はやって来た。


「ヒサカ・アルドレアって奴はお前か?」


顔がゴリラみたいな奴が俺を睨む


「そうだけど…お前だれ?」


「お前、俺の彼女に手ぇ出しろ?」


「ダル。名乗ってから声かけろよ。つかなに?お前の彼女?しらねー」


「しらばっくれんな!カナと□□たんだろ」


「カナ?ますますわかんねー、誰だよそれ。僕知りませ~ん」


「てめぇ」


男が殴りかかろうとしてきたがアルビーがその腕を止める。


「マルクス君、暴力はいけない。ヒサカも、無為に相手を怒らせるのはやめるんだ」


「はいはい。ごめんって」


「ヒサカ」


「わかったよ。すまん」


一応頭を下げる


「もういい。で、マルクス君。君の彼女がヒサカに取られたんだね?」


「そうだ」


「はぁ…ヒサカ。どうして君は…」


アルビーは呆れた表情で俺を見る


「いや、俺□□たっなんて一言も言ってねーだろ?」


「そういうのは日頃の行いを正してから言ってくれ」


「友達信じれねーとかないわー」


「ヒサカ、あんまり怒りたくないんだけど」


「いや、もう既に怒って…」


「何?」


ぎゅっと眉間にしわが寄り、方目が半開きで口も半開きだ。


(顔が怖い怖い怖い)


俺は思い出す。この世には怒らせてはならない人種が居る事を…


「いえ、すいません。僕がヤりました!」


殺気を感じ取った俺は素早くスライディング土下座をする。


「ヒサカ。謝る事から逃げるんじゃない」


それは確信を付いた言葉。おれはその言葉に静かに従い、立ち上がり、きちんと頭を上げる。


「ごめん。さっきまでの非礼と今までの事、謝らさせてくれ。

お前の彼女を誘ったのは俺だ。すまん」


顔を上げた瞬間、おもいっきり振りかぶったマルクスの拳が見えた。俺ばそれを顔面にもろに受け吹き飛ばされた。


「□緩い所はあるけど、あれでも俺の好きな女なんだ。次、同じことしてみろ、お前の□□□もぎ取ってやるからな!」


怒って帰っていくマルクスに俺は立ち上がり、見えなくなるまで頭を下げ続けた。


「アルビー、テツヤ。騒がしくした、すまん」


「いや。別に僕はそこまで…」


「君が何をしようと君の勝手だ。ただ、軽蔑はさせないでくれ」


アルビーはそう言い残しそのままどこかへ行ってしまう。


「ヒサカ。アルビーのような貴族にとって一般人と過ごす感覚はいつだって新鮮なんだ。この先も友達として接していきたいのだとしたら、立場を忘れて語り合える相手が今の君のままじゃ、アルビーは哀しむよ」


「ごめん」


俺は足をおもいっきりつねると共に今一度、自分を正す。詐欺師をやってたときと同じだ。正常な感覚を忘れないために、正しい人間とのコネクションは常に繋いできた。

全てをさらけ出したわけでなかったけど、自分が必ずしも正しくなくて、自分が自分でいられる場所は作って来た筈だ。


一時いっときの関係に溺れて、欲に流されて、正常な判断を失っていたのは俺だ。


(傲慢になるな。引き締めろ)


「改めてごめん。テツヤ」


「いいよ。僕は。それよりもアルビーに謝ったら?」


「ああ。行ってくる」


「うん。行ってらっしゃい」


テツヤに見送られ、俺は急いでアルビーに謝る為に、アルビーが出ていった方向に走っていった。


◇◇◇


渡り廊下を数分探した後ようやくアルビーに追い付いた俺は友人の名前を呼ぶ。


「アルビー」


「ヒサカ…」


「ごめん!」


「何が、ごめんなんだい?」


やや、憂いに満ちた表情からは大きな失望が見てとれる。

他人の関係を気にもとめずに軽い気持ちで壊した俺の事を軽蔑しているのだろう。


「俺、お前らが友人で居てくれる事に胡座をかいて、傲慢になって。

友人として人として大事なことを見失いかけてた」


「大事なことって?」


「具体的には言えないけど、人を傷つけるような事を流されるままにやってた。欲を満たすためだけに、今までだって沢山の人を傷つけてきた、不幸にしてきた。それなのに贖罪も済ましてない。

けどそれでも、こんな俺を友人として慕ってくれてるお前らには誠意を見せたくて…だから謝らせてくれ、自分勝手でほんとにごめん」


深く頭を下げる


「ヒサカとあったときに目を見て、ヒサカがどんな人間かもある程度は分かってたよ。悪い事をしてきたって顔してたから」


「けど、接してみてこうも分かった。この人は自分なりに必死で、本音の部分じゃ素直な良い奴なんだって」


アルビーが笑顔でそういう。


「な、なにいってんだよ……くそっ」


ポタポタと涙が流れる。溢れ出るような涙は塞き止める事ができない。

俺は悪い奴だ、今も昔もそれは変わらない。けど、それでも一時いっときでも自分の人生が肯定されたようなそんな気がした。


「だから僕はこれからもヒサカの善き友人として居るよ。それに、今回で反省したみたいだしね」


「バカ、後悔すんなよ?」


「しないよ。僕は貴族だよ?」


「こんなときに貴族マウントとるなよ、ばか」


「はは」


「あのさ…俺ってそんなに人相わるいの…」


「どうして?」


「お前が悪い顔してたって言うから…」


「ぷ。いや、悪く…ぷ」


「おい。笑うな!」


「大丈夫だよ。少し目付きが悪いだけで、悪くはないよ」


「それって結局悪いんじゃねーか。ま、仕方ないけど」


「まさか。ヒサカが謝りに来るとはね」


「迷惑をかけたら謝るなんて当然だろ?」


「君はもっとひねくれたタイプに見えたから今回みたいに素直に謝ってくれるのは意外だったんだよ」


「俺はそこまで根性品曲がってねーよ。悪い所があったなら直す、他人と関わっていくのにそれは重要な事だろ」


「誰もが君みたいに出来るわけじゃない。僕だって自分の意見を通したい時だってある」


「そういうもんか?」


「そういうものだよ」


「ふーん」


俺には今一理解できない事だ。


「聞いていいかい?」


「なんだ?」


「ヒサカ・アルドレア。君はどこの誰だい?」


「へ?」


俺は予想だにしないその疑問に驚きと戸惑いを覚え、立ちつくした。

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