第2話〈スケジュール〉

制服に着替えた長峡仁衛。

辰喰ロロは彼の身嗜みを整えて良しと呟く。


「風呂入って歯を磨いて……準備は完了したみたいだな」


「あぁ、じゃあごはんでも」


先に風呂に入った為に、朝食がまだだった長峡仁衛。

腹を空かせている為にお腹を擦って腹ペコだと合図した。

だが、辰喰ロロはそんな彼に向けて手に収まる程の手帳を取り出す。


「その前に今日のスケジュールを確認してもらうぞ」


「スケジュール?」


それはどうやら、長峡仁衛のスケジュール表であるらしい。


「あぁ、メイドたるもの、主人の予定を決めておくのは当たり前だからな」


「えぇ?メイドが予定を決めるのか?メイドが予定を把握するんじゃないのか?」


長峡仁衛は彼女が予定を決めている事を知って首を傾げた。


「取り合えず、だ。お前の為に書いてやったんだ。ちゃんと聞けよ」


「あ、あぁ」


こほん、と咳払いをして、辰喰ロロは長峡仁衛のスケジュールを発表した。


「今日の予定は七時から朝食、七時三十分までに食事を済ませて八時までトイレ、八時一分に登校後、八時二分に学園に到着、八時三分から自習(討論)八時四分からプール掃除、十時から休憩、十時三分から体育館の天井に挟まったバレーボール取り、十時二十分に保健室で治療、」


「………あのさ、辰喰」


まだ午前中にもなってない。

それでも長峡仁衛は彼女の予定を一度止めた。


「なんだ。口を挟んできて、スケジュールに不満があるのか?」


「……内容も内容だけどさ」


長峡仁衛は時計を見た。


「今八時なんだけど」


既に予定が過ぎていた。

辰喰ロロはそうか、と呟いてスケジュールに書き足していく。


「そうか、じゃあごはんとトイレは我慢する事で調整して……ほら急げ、あと一分で登校だ」


「なんでそんな詰めてるんだよッ!」


思わず、長峡仁衛は叫んでしまう。

パタン、とスケジュール長を閉ざす辰喰ロロは言う。


「忙しい身分だろ?」


「トイレに掛ける時間を顧みろッ!時間の配分可笑しいだろッ」


辰喰ロロのスケジュール帳を奪うと、長峡仁衛は目を通す。

そして朝から始まるスケジュール内容を確認して一つ一つ彼女に確認していく。


「しかも八時三分、自習(討論)ってどういう意味だ」


「討論するんだろ、一人で」


「一人で出来ると思ってるのか?」


「自論並べて持論するだけだろ?」


「相手の反論無いと討論にならないだろうがッ」


そう叫んで長峡仁衛は息を吐く。

まだ、その部分は軽いものだ。


「いや、そこは良い……なんでその一分後にプール掃除なんなんだ……」


「お嬢様が近日中に家のプール掃除をしろと言うからな」


「学校じゃなくて自家用かよ、自分の仕事を他人に押し付けるなよ」


パタン、と長峡仁衛はスケジュール帳を閉ざして、彼女の目を見て言う。


「あのな、一応は、俺はお前のご主人なんだろ?」


「なんだ、今更自覚したのか」


フッ、と笑みを浮かべる辰喰ロロ。


「なんで上から目線なんだ、お前は……」


長峡仁衛は再び溜息を吐く。

もう、彼女の考えている事はまるで分からなかった。





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