第1話 自分の部屋のクローゼットが……

 土曜日の昼過ぎ高校二年生の如月祐樹きさらぎゆうきは残り僅かな夏休みをベットの上でゴロゴロしながらスマホでネット小説を読み漁っていた。すると突然地震が発生し大きく揺れた。


「うわ、地震!」

 余りの揺れに驚いて声が出てしまったが、揺れは直ぐに収まった。揺れが収まるとお母さんが息子の安否を心配して部屋に入ってきた。


「祐樹~大丈夫だった?」


「大丈夫、大丈夫。それよりお母さんは大丈夫なの?」


「直ぐにテーブルの下に隠れたから大丈夫だったけど、お皿が何枚か割れちゃったわ。また買い足さないといけないけど、これぐらいの被害で済んで良かったわ」


「お皿が割れたなら俺も片付け手伝うよ」


 二人は一階のリビングに降りてテレビをつけて破片を片付けているとニュースが日本政府からの会見へと変わった。テレビには菅原総理が映し出された。


『先ほど日本全国で震度5強の地震が観測されました。震源地は不明。我々は現在地震の専門家を召集し対策チームを作り地震の調査を行っております。国民の皆様方にはこれから余震で大きく揺れる可能性がありので警戒して下さい……』


「全国が同時に揺れるなんて怖いわね。何かが起こる前触れなんじゃないかしら」

お母さんは心配で仕方なかった。


「そうだね。震源地も不明らしいし不思議だよね」


 祐樹は皿の片づけを済まして部屋の物が壊れていないかチェックしに自室へと戻った。


「何も壊れてなければいいけど……。ふぅ~良かった全部無事そうだ」

 部屋の隅々までチェックしたところ、被害は無く物が散乱したぐらいで済んだ。本棚から落ちた本を本棚に戻して、お気に入りのアニメのフィギュアを確認。散らばった教科書とプリントを整頓した。


「良かった~。何も壊れてなかった。あと確認してないのはクローゼットだけか……」

 祐樹がクローゼットを空けたとき服や本など色々仕舞っていたはずの物が無くなっていたので言葉を失い固まってしまった。


「はぁ?!えっ、えっ?どういうこと?俺の服と本は?何なのこのコンクリートの通路は?」

 この時の祐樹は人生で一番混乱していた。大事にしていた物が全て綺麗さっぱり失われていたのだから。だが、異世界物の小説が好きな祐樹はこれが何か気が付いた。


「これってダンジョンじゃないかな?ということはかなりヤバいんじゃ……」


 祐樹は気が付いてしまった。これをこのまま放置したとして魔物がいる可能性のあるダンジョンがすぐ隣にあってはおちおち寝てもいられない。それに、ダンジョンを放置してしまうと魔物が溢れてスタンピードが起こる可能性があると言うのが定番だからだ。だが、ダンジョンといえばコアがあるはずなのでそれを破壊すれば元に戻るかもしれないという希望もあり攻略しようと心に決めた。


「頼むぞ俺の宝物を返してくれよ!」


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