『残酷劇物質~グランギニョルオブジェクト~』の件について、調べてみました。
こんにちは! ノリ大和と申します!
今、一部界隈で炎上中の『残酷劇物質~グランギニョルオブジェクト~』の件について、調べてみました。
今回の騒動は、関係者各位が匿名であり、誰もが沈黙を貫いているので、全てを把握している人が少ないのではないのでしょうか。
デマや憶測が飛び交い、あらゆる場所で風評被害が相次いでいて、皆が皆うんざりしていることだと思います。
幸いにも私はことの一部に関わっていたことから、ほんの少しだけ、何も知らない人よりは詳しいという立場にいます。なので情報提供も兼ねて、今回の炎上の件について調査してみました。
ではまず『残酷劇物質』とは何かをお話ししましょう。
『残酷劇物質』は、同人アクションRPG『アフターダークガールズ』の二次創作ゲームです。個人運営のサイトの『夕闇下水溝』に投稿されたゲームで、最初のうちはサイト利用者の間だけで話題でしたが、大手VRサイトでVR配信者である『
その全容を把握するには、『アフターダークガールズ』『夕闇下水溝』について説明する必要があります。
『アフターダークガールズ』とは?
1992年にディベルタ氏によって製作され、コミックマーケットにて一作目が販売されました。現在42作にも及ぶ長寿シリーズで、やりごたえのある難易度かつ迫力のあるBGM。つたないながらも味があるイラストによって描かれた多種多様の魅力的な少女たちが特徴です。作者が二次創作を制限付きで許可しており、最盛期には大規模サークル参加者が2000を超えることもありました。
夕闇世界と呼ばれる異世界で、様々な少女が時に争い、時に仲良くするのが各シリーズのおおまかなあらすじです。原作者からの明言はされていませんが、キャラクターそれぞれが世界各地の神話の登場人物や歴史上の偉人をモチーフにされており、ファンの間で来ている服や性格から誰がモデルかを考察するのが盛んでもあります。
『夕闇下水溝』とは?
『アフターダークガールズ』の二次創作を投稿するためのサイトですが、ここは少々他では投稿できないような作品を発表するための場所でもありました。
投稿されるのは主にアダルトコンテツで、その中でも『猟奇趣味』『被虐趣味』『近親相姦』『ハードな凌辱』『キャラクターを動物化し虐待する』『スカトロ』等、他所では少し反応が良くない作品が多くありました。
アンダーグラウンド色の強いサイトですが、他所で人気の絵師や作家もこっそりと参加していることもあってか、これ系等のサイトでは最大手の規模を誇る場所でもあります。ライトノベル『君の瞳に住む僕』で有名な
その作風故、下水溝の住民たちは投稿された作品を他所に持ち出すことを嫌い、今回の騒動もサイト内で大きく議論されています。
しかしながらこのような場所で生まれたと思えないようなクオリティの高い作品も数あるのが事実です。下に挙げる作品もこの場所になじみのない人でも聞いたことがあるのではないでしょうか。
例えば『ジェーン・ハンターの解剖恋愛学』と言う二次創作漫画です。
ジェーン・ハンターはアフタダークガールズ23作目に登場する敵キャラクターで、主人公であるジャクリーン・Mが裏アメリカで起こる怪事件を起こしている人物を探しているうちに、墓荒らしをしている彼女に行き当たります。ジェーンは解剖大好きというキャラクターで、その解剖学の発展のために墓から死体を掘り起こしていたわけですが、今回の事件とそれとは別件で、ジヤクリーンとジェーンは激しい戦いを繰り広げた後、仲良くなり真の黒幕に挑むことになります。まあこれ以上はネタバレになるので置いておきます。
勘のいいひとはすぐ察したと思いますが、ジェーン・ハンターは18世紀イギリスの外科医であるジョン・ハンターをモチーフにしたキャラクターです。割とそのままですね。彼は「実験医学の父」「近代外科学の開祖」と呼ばれ、近代医学の発展に貢献した人物です。その一方で葬儀業者から死体を買い取ったり 墓荒らしに金を握らせて埋葬されたばかりの死体を掘り起こして届けさせて解剖の実験に使用していたという面もありました。
『ジェーン・ハンターの解剖恋愛学』もまたそんなジョン・ハンターのエピソードの一つを下敷きとしています。
この話は原作に登場しない男性キャラクターの視点で進む、いわゆるオリ主もの(オリジナル主人公モノ)の一つです。主人公は見世物小屋で働く巨人証の男性です。成功を夢見て彼は裏アイルランドから裏イギリスへ移り、その2.5メートルもある身長の高さから、すぐに見世物小屋で人気となりました。しかしながらそれは一時的なもので、裏ロンドンの住民の興味はすぐに別の人物へと移りました。悲観的になった主人公は堕落的な生活を送るようになり、アパートにこもり酒浸りの生活を続けるようになりました。
そんな彼に興味を持った人物がいます。それがジェ-ン・ハンターでした。
解剖医として主人公の体に興味を持った彼女は積極的に主人公にアプローチを仕掛けます。主人公の視点では、彼女は陰のある妖艶な美少女として描かれており、初めは自分の死体が目当てだというジェーンに拒否感を抱いていたものの、次第に彼女にひかれていく自分を感じ、葛藤を抱いて生活を送るようになりました。その描写は優も青交えながらどこか悲壮感が漂って書かれており、ある種のブラックジョークのような雰囲気がありました。主人公はますますアルコールに溺れ、夜な夜な悪夢を見るようになりました。それは彼がいきたままジェーンに解剖される夢でした。六人の彼女に囲まれ、腹を咲かれ、腕から骨を取り外され、眼球をえぐられ、頭蓋骨を開いて脳を取り外されます。その一つ一つを知覚し、そして自分の体が彼女に切りつけられることに快楽を抱くようになっていったのです。次第に彼は夢と現実の区別がつかなくなり、本来知る由もない未来の小説であるマゾッホやバタイユの引用を始めました。
そしてある日、主人公は彼女の要望を受け入れ、恋文をジェーンにしたため、この世を去りました。そしてジェーン・ハンターはその死体にキスをして、解剖を始める、というラストで締めくくられています。
この小説は夕闇下水溝に投稿され、またたくまにサイト内で注目を集めました。当時の解剖学の面から言っても矛盾がなく、また18世紀当時の文学的な雰囲気を持ったモノローグが挟まれ、癖が強いながらもカルト作品的な人気を誇っていたのです。しかし人気が出るあまり、他所でリンクを張る者まで現れ、次第にこの作品はサイト内では腫物を扱うように変わっていきました。他所にまで転載されたために本来内輪的に楽しむための部分も批判されるようになっていきました。例えばジョン・ハンターが解剖した巨人症の男性は実在しており、そうした人物を『解剖をされたがっていた』と改変し、あまつさえロマンス的に書くことは不謹慎であるというものです。
他には序盤に主人公が所属していた見世物小屋の主人が、アフタダークガールズ23作目の登場人物のファーブなのですが、彼女はアメリカの興行主であるP・T・バーナムをモチーフにしています。巨人症の主人公のモデルであるチャールズ・バーンが所属していた見世物小屋とは別の所属であり、そのあたりが歴史的考察が甘いという指摘もありました。これに対しては、物語の序盤は主人公の独白によって続き、他の登場人物があまり現れず、その分まるで一次創作歴史漫画を読んでいるような気分になってしまうのです。かろうじでファーブがいることで二次創作としての面を保っていたと考えれば、やむを得ない改変だったのかもしれません。
さて少し脱線してしまいましたね。ただ『ジェーン・ハンターの解剖恋愛学』の炎上は今回の炎上の件と似通った部分もあるのに加え、夕闇下水溝を語るうえで重要な作品の一つであるため、説明が必要だったわけです。
『ジェーン・ハンターの解剖恋愛学』はクオリティが高いかつ、夕闇下水溝の住人が求めている者と合致はしていましたが、外部でその作品に感銘を受けた人にとって、下水溝は決して住みやすい場所ではありませんでした。グロテスクで悪趣味的だと言える絵や小説やゲームが日夜投稿され、新参者はそのまま合わないと去っていく者がいるいる一方、荒らしと化した者や、下水溝を問題のある場所として閉鎖を求める声も多く上がりました。
ちなみに閉鎖したほうがいいかは今回の問題点ではないので、私の意見を言うことはこの場では差し控えさせていただきます。
本来は一枚絵や短編で性癖(ここではあえてそう呼ばせていただきます)を共有する場所であり、内部でもしっかりと住みわけが徹底されています。ですから外部からの大量な流入はあまり歓迎はしていませんでした。
『残酷劇物質~グランギニョルオブジェクト~』もまたその時と同じように『持ち出し』と言う行為を行ったために起った炎上だと言えるでしょう。
『残酷劇物質~グランギニョルオブジェクト~』とは?
『VRゲームクリエイターズ』と呼ばれる有料ソフトによって作られた、『アフターダークガールズ』の二次創作ゲームです。ジャンルはVRアドベンチャーゲームで、ホラー的な面もあります。興味を持った人はそのあたりは気を付けてください。
これもまたオリ主物でアフターダークガールズのキャラクターと共に夕闇世界を調査する、という内容になっています。このゲームの特色は登場人物と仲良く世界を探索しながら、選択肢によっては彼女たちが酷い目に合うというものです。仲良くなった女の子が、主人公の過ちによって残酷な目に合う。プレイヤーは無力感に打ちひしがれ、加虐趣味と被虐趣味の両方を得られるというわけです。
問題になったのはそのゲームの登場人物の一人である『ミミノ』がかかわっているエピソードです。
ミミノはアフターダークガールズ35作目に登場する少女で、サンズ皇国の第三皇女です。皇族でありながら好奇心旺盛で、学校では民俗学を学んでいて、足で歩いて実際に調査を行います。
残酷劇物質では彼女は主人公と共に裏ニューギニアにて首狩りの風習が残る部族との交流を行い、美術品の交換などをしていました。そんなある日主人公たちの乗る船が故障し、しびれを切らしたミミノは首狩り族に助けを求めるために、その場から泳いで離れます。ストーリー上はそこが分岐点となり彼女を止めなかった場合は、バッドエンドへと向かうことになります。そしてミミノが差の場を去った後、しばらくするとまた分岐が現れ、様子を見に行くかと言う選択肢が現れます。
そこで『様子を見に行く』を選択した場合、首狩り族に解体され食されている彼女の姿を目のあたりにするというわけです。
今回の騒動を大まかに調べた方はご存じでしょうが、この話は『ロックフェラー失踪事件』をもとに作られています。
ロックフェラー失踪事件はアメリカ合衆国代41代副大統領のネルソン・ロックフェラーの息子、マイケル・ロックフェラーが、ニューギニアのアスマット族に興味を持ち、接触を繰り返すうちに行方不明になった事件のことです。彼がどうして死んだかは公式には認められてはいませんが、ほぼ確実にアスマット族に食べられたという見解が一般的です。
実在の事件をモチーフに性的加虐心を満たすようなストーリーを描いたことが、今回の炎上の原因だったのでしょうか? そう問われれば、私はそういう面もまたあると、答えます。
ロックフェラー失踪事件はオランダによるニューギニア植民地支配、人食い族としての文化的宗教観、近代社会とアスマット族のコスモロジーの違いなど様々な面が密接に絡み合って起きた事件であり、単純な残酷劇として描かれたことに多くの批判が集まったことも事実です。また、アスマット族は現在首狩りの風習をインドネシア政府によって途絶えさせられており、過去のことを露悪的に表現することは差別的でもあるという意見もありました。
しかしそれだけではここまでの炎上はしなかったでしょう。
一番の原因が、ミミノが
ミミノ、及びその母親であるホホ子は他のキャラクターに比べてモデルの人物のヒントが少なく描かれていました。それでも、和風で架空の国である『サンズ』を建国した女皇がホホ子であることから、三女であるミミノが二代目天皇である、綏靖天皇を元にしていることは暗黙の了解のようなものがありました。そのためある種のセンシティブさが付きまとい、二次創作ではあまり登場することが少なく、R-18イラストもほんのわずかしか存在しませんでした。
残酷物質の制作者はそのことを知らなかったのでしょうか?
答えは『いいえ』です。
ゲーム内でミミコは首狩り族に対して、人肉を分けてもらう場面が存在し、これは綏靖天皇が食人の趣味があり朝夕に7人もの人々を食べて周囲を恐怖に陥れたという伝承(あくまで伝承です(そもそも実在性も疑われていますが))を元にしているとの見解が強いです。ですから制作者が意図的に行っていたことは間違いないと言っていいでしょう。
これら「天皇を首狩り族に食わせる話で性的欲求を満たした」ということが今回の炎上の原因だというわけです。
こうして並べてみると結構単純な原因に見えますが、上記で言ったように下水溝の住民は排他的な側面が強く、そのほかにも愉快犯がSNSや掲示板で多く出没してデマがふりまかれているため、全容を把握しずらくなっているということのようです。
いかがでしたか? ご参考になりましたか?
先ほども言いました通り、今回の調査はあくまで全容を示すためのものであり、私的な意見を述べるためのものではありません。『文章からどちら側の意見を持っているかわかる』と言われれば、それは私の文章力の未熟さ故であり、そのことについては謝罪をしますが、私自身がどちらの意見も持ち合わせてはいません。
それではまた次回お会いしましょう。
次の更新は一週間後になると思います。
※ ※ ※
コメント
こんにちは! 私もまたこの騒動に対して『なんか炎上しているなー』って程度の認識だったんですがノリ大和さんのおかげで、何が原因だったのかわかりました! ありがとうございます^^
全部を信じるわけじゃないけど、一視点としては割と参考になった。ただ無理に中立ぶろうとしている所が気持ち悪い。
すみません。わたしは戸摩氏ロロのファンなのですが今回の騒動で叩かれていて悲しいです。彼女の援護をしていただけないでしょうか。
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