第22話『魔力(マナ)の土地』と脱線しまくるアモル先生
レリルール学園、アウラとルシオラが授業を受けている教室。
アモル先生は名簿と生徒を照らし合わせながら、
「えーと……では、
「えっ、俺?」
「ええ、授業中ですから寝てはダメですよ」
「先生も遅刻したじゃんかー」
「ぐっ、それを言われると……僕も次からは気を付けますから、説明をお願いします」
「しゃーねぇなぁ。 『
「そうですね。 『
アモル先生はカツカツと黒板に説明図を書きながら、
「このレリルール王都の『
「はいはーい!
「はい、正解です。 レリルール王都の土地は『
活発そうな女生徒がアモル先生の質問に答える。
「……授業から脱線してしまいますが、レリルール王国を建国した初代国王陛下は、今から5000年前にあった
「異能狩りって『
「レリルール王国や魔法使い、魔女達には『魔女狩り』と知られてますね。 実際に異能狩りがあった、ここから北北東方角にあったルイン亡国の人々には『異能狩り』と知られてます」
「どうしてですかー?」
「実際に異能狩りを執行した人々、ルイン亡国……いえ、当時はルノマイン大帝国でしょうか。 彼らの目的は魔法だけではなく、亜人種に分類されるエルフの自然を操る
「えっ。 エルフや獣人って実在した種族だったんですか、
「……ええ、異種族を研究している研究者達には実際した種族だと言われています。 ただ、長寿のエルフは
「獣人は?」
「絶滅したと。 ドラゴニュートやドワーフが獣人の末裔じゃないかと言う研究者もおられますが、真実は分かりません……」
「「「「…………」」」」
「この異能狩りも大賢者プルフィティアがルノマイン大帝国を滅ぼし、新たにルイン亡国を建国したことによって終息しました……」
アモル先生の話と、質問をしていた好奇心旺盛な生徒達の話が終わる。
生徒達が数多くある種族のひとつと、一国が滅びなければ終わらなかった『魔女狩り』に言葉をなくす。
「あー、すみません。 重い空気になってしまいましたね。 授業の話に戻りますが、レリルール王国国内には王都以外にも『
アウラは具合が悪そうなルシオラをチラッと気遣うように見て、ヘルバの泉がダメならば……と口を開く。
「はい。ええと……風属性の『
「ええ、 『天空のアスーレ城』は……ああ、授業終了のチャイムですね。 あんまり進まなくてすみません。 この続きは次回で挽回しますね」
初日から遅刻して、脱線しまくったアモル先生は申し訳なさそうに頭をたれる。
「アモル先生またねー」
「じゃあなぁ」
生徒達は教科書やノートをまとめて、挨拶をして教室を後にする。
アモル先生は生徒達を見送ったあとに、アウラとルシオラの側へ歩いてくる。
「アウラさん。 ルシオラさんの具合はどうですか? ずっと悪そうにしてましたが……」
「……大丈夫……です。 ご心配おかけしました」
「ルシオラ……」
アウラが本当に大丈夫? と目線で訴える。
「うん、大丈夫だよ。 アウラ。 だいぶ落ち着いたよ……」
「……ルシオラさん、まだ顔色が悪いですよ」
「……ルシ、魔法研究の授業まで時間があるから中庭で休もう。 アモル先生また」
「……ええ、また次の授業で。 ルシオラさん。 アウラさん……」
アウラはルシオラにぴったりと寄り添い手を握り、アモル先生に挨拶して歩いて行く。
アモル先生は手を振り、穏やかに微笑みながら二人を見送る。
ーーーー
地理担当、マリナ・アルゼニアの研究室。
アウラとルシオラと別れたアモル先生は、カーテンを締め切って薄暗いマリナ先生の研究室の窓際に腰掛け、微かに開いたカーテンの隙間から中庭の様子を伺う。
中庭では木漏れ日が降り注ぐ大木の下で、アウラが膝枕してルシオラを休ませている。
(
アウラから愛情を向けられるルシオラは忌々しく見つめ一冊の分厚い本をローブの奥、懐から取り出す。
その分厚い本の表紙は太陽と杖、裏表紙は星と月がペアになるようにデザインされた赤紫色の新品同様の本だ。
アモル先生は最初のページを開き、綴られた文字に目を通す。
ー……へー
君の真名の文字はこれで合っているだろうか、異国の文字は難しく、間違っていたらすまない。
(漢字が微妙にちげぇし……)
この【預言書】を見ることが出来、文字すらも読める君は、私同様かそれ以上の魔力の持ち主なのだろう。
そして
君が生きる時代に私と彼女は生きてはいない。 私達の子孫も君が【預言書】を見つけた後に絶えるだろう。
血筋が絶たれることより君と会えないことだけが残念だ。
会ったことすらない君に頼むのは筋違いだが、ふたつだけ頼みがある、この【預言書】に綴られた未来は決して変わらない。 それは私自信がよく知っている。
君には、この結末と、私の親友と弟の子孫の行く末を見守って欲しいのと、哀れな小鳥を救って欲しい。
その結末の先で、君は、君自信が望んでいたものを手に入れられるだろう。
ープルフィティアよりー
(俺が見つけることも預言していたんだな……)
アモル先生は本を閉じて表紙の太陽と杖を手でなぞり見つめる。
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