第19話ドキドキわくわく“恋占い”

「「ラ…ラピドゥス様?どうしてここに??」」

((あれ、フィリア、爪切り取りに行ったんじゃなかったの!!??))

「や、フィリアに呼ばれたんだけどさ。

 何があったのか?」


 アウラとルシオラの疑問に、ラピドゥスもフィリアに何も聞かされていないのか、頭を横に傾げていた。

 フィリオはげんなりしてて、カナリアがフィリオの肩をポンと叩いて慰めている。


「実はラピドゥス様にお願いがございまして、これからアウラとルシオラの“”をするところですが、ふたりの爪を、少量だけ取っ手いただきたく」

「……か」


 フィリアの説明を聞いているラピドゥスは、ポツリと呟いて、ずず~んと暗くなっていく。


「フィリオさん。

 ラピドゥスのが、君の気持ち分かると思うけど?」

「………自分がしたことを自分に返ってきただけじゃないですか。

 カナリア様だけ、?」

(王子達は全員ブラコン、シスコンだと思っていたけど)


 フィリオはカナリアの言葉に、大好きな双子の姉の婚約者であるラピドゥスを、じとーーと睨みながら、前々から思っていたことをカナリアに問いかける。


「ずっと?」

「うん、1から」

「それ「フィリオー、準備出来たわよ」



 ーーーー



 カナリアとフィリオの内緒話から、時は遡り冒頭へ戻る。


「「ラ…ラピドゥス様?どうしてここに??」」

((あれ、フィリア、爪切り取りに行ったんじゃなかったの!!??))

「や、フィリアに呼ばれたんだけどさ。

 何があったのか?」


 アウラとルシオラの疑問に、ラピドゥスもフィリアに何も聞かされていないのか、頭を横に傾げていた。

 フィリオはげんなりしてて、カナリアがフィリオの肩をポンと叩いて慰めている。


「実はラピドゥス様にお願いがございまして、これからアウラとルシオラの“”をするところですが、ふたりの爪を、少量だけ取っ手いただきたく」

「……か」

「ラピドゥス様、具合が悪いんですか?

 魔法薬の授業で作った、日頃の疲労が吹っ飛ぶ【栄養ドリンク】ありますが、飲みますか?」


 ルシオラは黒いローブに付いてる、大きさ関係なく、いろんな物が無限に入る【魔法ポケット】から、茶色の小瓶を取り出す。


「や、ルシオラ、大丈夫だ、疲労じゃねーし。

 フィリオにしたことが、俺に返ってきただけだから…」

「返ってきた??」

「お前はだもんなー…」

「…え、ええ」

(あれ?なんだろうこの感じ、フィリオがラピドゥス様に向けてる感情と同じ気がする)


 ラピドゥスの言葉にルシオラは、ただただ困惑するだけだった。


「…フィリア、爪切り見付からなかったの?」

「アウラ達の爪の長さじゃ、爪切りで切るのは難しいと思って」

「私とルシオラは、薬草詰みや薬作りの邪魔にならないように、爪は整えているけど…」

「毎日、爪ヤスリで整えているわよね」


 そう、フィリアが言っているように、アウラとルシオラは、毎日、爪の手入れをしている為、爪切りで切れる爪がなかった。

 フィリアが言いたいことが、よく分からないアウラは、自分の長い髪を指差して、


「爪が難しいなら、髪じゃダメかな?少しなら」

「「「綺麗な髪が、勿体ないからダメ!!」」」


 アウラは自分のローブの【魔法ポケット】から、ハサミを取り出して、毛先だけ切ろうとしたが、ルシオラとフィリア、ラピドゥスに全力で止められた。

 なんでも「この世のものとは思えない漆黒の髪に、歩いて風になびく度に、醸し出される美しさを損なうことは出来ない」らしい。


「それじゃ、切り傷ぐらいなら初級【ポーション】で治せるし、私の“”じゃ」

「「もっとダメよ(だ)!?」」

「アウラに怪我してほしくないから、それは止めとこうね」


 アウラの提案に、前者の必死なハモりはフィリアとラピドゥスで、後者の冷静にたしなめる声はルシオラだ。


「では、ラピドゥス様。

 アウラ達の肌を傷付けない、ギリギリの力加減で、爪を少量だけ削って頂けませんか」

のあの事もありますし、安心して任せられるのはラピドゥス様だけなんです!)

「…お、おう。

 アウラ、ルシオラ、水盆の上に手を出して、動くなよ?」

(いや、分かってるからいいんだけどさ。

 何で爪ヤスリじゃなくて、俺なんだ?)

「う、うん。ねぇ、ルシ」

(だって、ラピドゥス様は“試験”と“あの事”で忙しく……王宮と学園を行き来してて、なかなか会えなかったんですもの…)

「な、何?アウラ」

(…フィリア。俺だって会いたかったさ)

「フィリアとラピドゥス様、ふたりだけの世界に入ってるんだけど…」

(ラピドゥス様)

「僕達を間に挟まないで欲しいよね…」

(フィリア)

「う…うん。恥ずかしい」


 このやり取りを、内緒話をしていたカナリアとフィリオが見ていたら、


((また、ダブルカップルがラブいちゃしてる…))


 と、カナリアは生暖かく、フィリオは複雑に見つめて、もしこの場にコルもいたら、あまりにもの「うるささ」で耳を押さえ、ラピドゥスの足を踏んだだろう。


「アウラ、ルシオラ動くなよ」

「「う…うん。どう」」


 最後の「ぞ」を言い終える前に、アウラとルシオラの爪に、一陣の風が吹いた。

 パラパラと粉砕されたアウラとルシオラの【爪】が、水盆の中に落ちていく。


「フィリア、これぐらいでいいか?」

「はい、ラピドゥス様、ありがとうございます。

 フィリオー、準備出来たわよ」

「「????」」

「アウラ、ルシオラ。

 自分の爪を見つめて、どうしたの?」

「「カナリア様。

 ラピドゥス様が、どの辺の爪を削ったのかなって」」

「ああ、ラピドゥスは兄弟の中で、魔力調節や細かい作業が得意だからね」


 カナリアはアウラとルシオラの手元を覗く、


「……ラピドゥス、本当に削ったの?」

「薬指の先っぽを少しな」

「「「薬指」」」


 アウラ、ルシオラ、カナリアはじっと薬指を見つめるが、


「「変わってないよね?」」

「見た目は変わってませんね」


「アウラ、ルシオラ、そろそろいい?」

「あ、うん。大丈夫だよ」


 会話に一区切りついたところで、フィリオが声をかけて、ルシオラが返事をする。


「どうすればいいの?」


 アウラの問いかけに、


「アウラとルシオラは水盆を挟んで向かい合って、手を繋いで、ゆっくり目を閉じて」

「「…うん」」


 ふたりはフィリアの説明通りに動く。


「自分の魔力を…薬を作っている時みたいに、水盆に注いで……そのまま、じっとしてて」


 フィリアとフィリオも水盆を挟んで向かい合う。

 図にすると、下のように並んでいる。


    フィリア

     ↓

 アウラ→水盆←ルシオラ

     ↑

    フィリオ


 フィリアとフィリオも、ゆっくり目を閉じて、魔力を水盆に注ぐ、


「「〈静寂を司る闇よ。夜空に煌めく星よ。

 我等の声が願いが届くならば、かの者達の相性を運命を、清らかな魔力を宿す水面みなもに写し出して〉」」


 フィリアとフィリオが「占い」の呪文を唱え終えると水面を覗く、


と…」

…」

…」


 ふたりは水面に写った姿を交互に言っていく、そして最後に写ったのが、


「「…?」」

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