第10話レリルール学園案内②

 アウラとルシオラが退出した学園長室で。


「ネロいるか?」

「ここに」


 ロイザ学園長の目の前に水が集まっていき、その水が水のまま美しい女性の姿になる。


「我が主人、なにか御用でしょうか?」


 たっぷんとネロと呼ばれた女性の水が揺れる。


「アウラとルシオラの護衛を頼む」

「承知いたしました」

「それから、お前知っていただろう?」

「何をでしょうか?」

「アウラとルシオラが付き合ってることだ」

「それは……『』に住まう我がから報告はございました」

「アニムス家のことは残らず報告しろと命じていたはずだが?」

「あら、我が子の恋バナも含まれておりましたか」

「はぁ」


 ロイザ学園長は頭を抱える。


「ルクルさんが亡くなったことで“アルカヌム”の

 は私のだ。16年前の犯人が分からない以上、アウラとルシオラを“”のにおくしかないだろう」

「…………ルシオラ様は既にご存知のようですし、ディアトロ家へ我が主人の後継者として引き取ったほうが、こんな回りくどくなく簡単に守られるのでは?」

「私に名乗る資格はない」


「カエルラ•アニムスとのことは、わたくし水の精霊王ウンディーネの契約者の“”のせいでございますから、あまりご自身を責めないほうがよろしいかと」


 その言葉を残して『ヘルバの泉』に暮らしていた、水の精霊王ウンディーネのネロは姿を消した。



 ーーーー



 ちゃぷん。


「ルシオラどうしたの?」

「いや、水の音?が聞こえた気がして」

「なにも聞こえなかったよ」

「気のせいか」


 アウラとルシオラはロイザ学園長から渡された学園の地図で、なんとか寮の共同スペースにある、防音の個室の勉強ルームに来ていた。これから作戦会議だ。


「僕達は魔法薬と、それ以外は筆記中心の授業を選ぼう。

 魔法実技は……“魔法詠唱道具”を使えば、アウラが魔法を使ってる風に見せれると思うけど、危険だからやめとこう」

「“魔法詠唱道具”って?」


「学園来る前に『魔力の蝶々マナ•パピリオー』いただろう。

 あの蝶みたいに“”と一般人でも安全に魔法が発動出来る道具だよ。

 ただこれを使うと他の生徒にバレないように””させないといけないし、残骸も残るからアウラの負担が大きい」


 ルシオラはアウラに分かりやすく紙に図解を書いて説明する。


「授業はペアを組んで受けるみたいだし、僕がフォローするからアウラが【惚れ薬】作れないことを隠し通そう」

「ルシオラの負担が多くない?」

「大丈夫だよ。アウラの王家の血を引く証、瞳の色と『使』ことを隠すためだから」

「……うん。無理しないでね」


 アウラはルシオラの肩に頭を乗せる。相変わらず近い距離です。


「これで大丈夫かな」


 ルシオラがペンを置くと選択した科目を見直した。


 歴史……レリルール王国と王家の歴史

 魔法歴史……魔法の発展の歴史

 地理……レリルール王国含め、交流国の地理など

 魔法薬……薬の精製、材料採取方法や注意事項など

 魔法薬研究……新しい薬の開発、研究など


「思ったより少ないね」


 アウラはルシオラが持ってる紙を覗き込んでそう言う。


「実践授業は省いたからね」




 ーーーー




 作戦会議を終えてアウラとルシオラは女子寮と男子寮に続く大広間でどうしたらいいのか、悩んでいた。寮へ続く階段やドアは無く、目の前は自分達よりも巨大な2枚の鏡があった。


「ここであってる」

「よね?」


 ルシオラは学園寮の地図と周りを交互に見渡して、アウラはルシオラの腕を抱きしめたまま地図を覗いていた。


「どうした?」

「また迷っているの?」


 後ろからはじめて聞く少年?の声と王都で道案内してくれた王家の小鳥を連れた少年と同じ声が聞こえた。


「貴方は王都で会った……」

「ごめんね。また名乗っていなかったね。

 僕はカナリア。カナリア•ルスキニア•ヴァンデルン•レリルール第四王子だよ」

(アウラの腹違いの弟か)


 アウラはルシオラの後ろに隠れて青色のリボンが付いた黒のローブと制服を着てるカナリアともう1人の少年を覗き込む。


「カナリアどういうことだ?」

「王都で道に迷っていたから、案内したんだよ」

「や、抜け駆けかよ」


 緑色の髪をポニーテールに纏めたつり目の少年がカナリアに意味不明な突っ込みを入れてる。

 フィリオと同じ赤いリボンが付いたローブと制服を着てる。


(私と同じいろ)


「ああ、俺はラピドゥス•ラーナ•ヴァンデルン•レリルール。

 こいつの腹違いの兄だ」


((今度は第三王子かっ!))


「お前達どうした?」


 ラピドゥスとカナリアの後ろからリボンの色が違うが、同じローブと制服を着た緋色にみつあみに編まれた男性と銀髪がツンツンと外側に跳ねた垂れ目の男性が歩いて来た。

 2人とも王族の


((ああ、今度は第一王子と第二王子))


 アウラとルシオラは1番避けたい人達に遭遇して目の前が真っ暗になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る