第2話【ポーション】

 ー6年前ー


「ししょー、すごい!すごい!」


 少女、アウラの10才の小さな手がパチパチと拍手する。


 アウラの左顔にある、火傷の痕をおおい隠す様に漆黒色のウェーブかかった前髪の隙間から少しだけ淡い紫苑色の可愛らしい瞳が見える。


 アウラが9年前、巨大なカラスと共にやって来た第五王妃様の忘れ形見、アウローラ王女である事は、だ。


「おばあさま、もういっかい、やって!」


 少年、ルシオラが祖母そっくりのボサボサな瑠璃色の髪と、母親そっくりの瞳をキラキラと輝かして祖母にせがむ。


「仕方ないのぉ、少し待っておれ。『器を水で浸せ〈アクア〉』」


 そう〈水魔法〉を詠唱すると、空っぽだった小さな土鍋の中が、底から徐々に魔法で作られた水【魔水】で浸されていく。


「「わぁぁ」」


 それだけでもアウラとルシオラは感動していた。

 2人は同い年なのでとても仲良しだ。


『ヘルバの森』の奥地にある庵には、わしと娘のカエルラと孫息子のルシオラ、愛弟子のアウラと「クロロ」と名付けた巨大なカラスの4人と1羽しかいない。


「お前達、よぉく見ておれ。

 この【回復薬草ヒール•ヘルバ】の粉末を入れてのぉ」


 炎の魔法の力が宿った石【フランマ魔石マナストーン】を使用した、長方形の【コンロ】に付いてる丸いスイッチを押すと、表面に細丸い輪っかが赤色に輝いた。


コンロこれは】魔法が使いない人々の暮らしを豊かにする為に魔法使いと魔女達が作った“魔法家電製品”のひとつで、火を出さずに料理など温められるので使っている。


(魔女のわしらには必要ないもんじゃが…アウラは火が怖いもんの、無理もないわ)


 わしはアウラの火傷の痕が出来た経緯を思い出す、アウラはあの時の記憶はなくても、身体は恐怖を覚えてしまっており、小さな火だけでも怯えてしまう。


「よっこいしょ」


 その上に材料が入った小さな土鍋を置く。


「火にかけてぇ、ゆっくり混ぜながら、魔力を注いでのぉ」


 木製のお玉で混ぜながら、土鍋の上に手をかざす。


「これぐらいでいいかのぉ」


 祖母は【コンロ】のスイッチを切る。


『器を水と氷で満たせ〈アクア〉〈グラキエース〉』


 別の大釜の中が氷水で満たされ、大釜の中に先ほどまで煮込んでいた小さな土鍋を中に入れる。


「冷ましての」


 祖母は棚から空っぽの小瓶を持って来て、周りに置いた。


「冷えたら、瓶に入れてのぉ」


 木製の小さなお玉で薄緑色に輝く液体を小さな土鍋からすくって、用意した小瓶にしながら入れて蓋をしめる。


「これで初級【ポーション】の完成じゃい!」

「「わぁ〜、すごい!すごい!」」


 アウラとルシオラは、元気にはしゃぐ。


「「ねーねー、しょ…きゅ?ってなぁに⁇」」

「1番簡単に作れるって意味じゃ、この【ポーション】は切傷ぐらいなら、すぐ治る」

「「ほかにはぁ、あるのぉ?」」

「他か、作り方が少し難しい中級と、難しい上級があるんじゃ」

「「おしえてー、おしえてー」」

「2人がもう少しぃ大きくなったらの」


 2人の頭をでる。


「そうじゃ、わしの““”も説明するかのぉ」

「「????」」

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