爆誕! 吸血鬼

バブみ道日丿宮組

お題:少女の衝撃 制限時間:15分

爆誕! 吸血鬼

 朝起きたら、隣に知らない人がいた。

「やぁ」

 ぱちぱちと瞬き。

「え? だ、誰?」

 部屋の片隅に逃げて一言。

「覚えてないの? 昨日家に泊めてくれるっていうから、そうしたのに。あぁ正確には助けてって声に従っていうのかな、うん。」

 記憶にございませんなんてどこかの政治家の言葉が浮かんだが、状況を整理することにした。

 ベッドの上には、下着姿の少女。私も下着姿。床に散らばるのは制服。私が通ってるものと、見慣れないデザインのもの。

 おそらくこれが少女のものだろう。スクールバッグも知らないもの。

 わかりそうなものといえば、丸テーブルに置かれた教科書(しかも同じもの)ということは、同世代。つまりは中学生。

 ここに泊まってるということは、お母さんが了承して、兄が許可したものだ。

 ちょっと想像がつかない。

 過保護な母と、シスコンなお兄ちゃん。

 2人が同性だとはいえ、お泊りを認めるのは大事件だ。

 学校で男子と話してるだけで家族会議が起きる家。

 もしかすると、何か理由があったりするのだろうか。

「ふぅ……」

 一呼吸。

「え、えっと……その……誰?」

 口に出せるのは落ち着いてきても変わらない。

「○○だよ」

「なんて?」

 聞き取れない言葉が流れた。

 英語、ドイツ語、イタリア語、中国語、韓国語、もちろん日本語でもないイントネーション。何に近いかいえば、悲鳴。そう耳鳴りがするもの。

「やっぱまだ聞こえないかー」

「なんでうちにいるの?」

「怪我したから連れてきたんだよ。あぁお母さんたちは魔法でごまかしてるから大丈夫だよ」

 魔法……? 怪我……? いったいなんのこと?

 ふと違和感があり、下に視線を向けると、お腹に稲妻のような傷跡ができてた。

「えっ? な、にこれ」

 触ってみると、確かに抉られてた感触がした。

「血を分けたからね。再生力は人間の比じゃないよ」

 姿見の前にくると、決定的な違いを理解した。

「白い髪……赤い目?」

 私は日本人で髪なんて染めてないから、黒髪の黒目のはず。

「吸血鬼って知ってる? 昨日その戦いに巻き込まれちゃって、君引き裂かれたんだよ」

 よく身体が上下にわかれなかったよと、続く言葉。

「じゃぁ……これって吸血鬼になったってこと?」

「おー、理解がはやくて助かるよ。一部が吸血鬼になったってところかな」

 少女はベッドから降りて、制服を掴む。

「ほら、制服血だらけでしょ」

 私の制服はズタズタで赤黒く染まってた。

「わかったことだし、これからの話をしよう」

 

 そうして私たちの物語が始まった。

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爆誕! 吸血鬼 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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