できること、できないこと

バブみ道日丿宮組

お題:今日の彼女 制限時間:15分

できること、できないこと

 自慢できる人というのは実は限られてるもの。

 それは有名人であったり、家族であったり、友だちであったりもする。

 僕の場合は彼女だった。

 彼女のすること全てが愛しくて、凄くて、自慢するしか才能のない僕にはできなかった。

『僕もふさわしいようになにかがしたい』

 そう彼女に問うと、彼女は笑って普通でいいんだよと言った。

 それで満足できればよかったのだが、僕は焦りすぎた。

「もう二度としないで」

 パイプ椅子に座ってこちらを見る彼女の声は震えてた。

「……それはわからないな」

 僕の動かなくなった右手を彼女は掴んだ。

 焦りすぎた僕はといえば、こうして病室に押し込められることとなった。

「僕はね、君みたいに誰にでも優しくて、誰にも手を差し伸べられる人間になりたかったんだ」

「そう……でも、自殺まがいのことをするのとは違う」

 そうだねと僕は彼女に笑う。

 僕がしたことは、引かれそうになった子どもと入れ替わるように道路へと突っ込むというどうしようもないこと。後々考えれば、何もしなくても子どもは助かってた。

 僕はただの偽善的な行動で怪我をしたのだ。つまり、アホ。

「誰かの助けになるって難しいんだね」

 視界を彼女から天井へと向ける。

「そうだよ。みんなできることから頑張ってるの。いきなりなんてことはないの。私だってそう。できることをやってるに過ぎない」

「そうなのか……そうかもしれないね」

 スポーツ選手がいきなり全国大会で優勝できるわけはなくて、学内成績のビリの生徒が東大に受かったりする。そんな世界はない。努力は実ることもあるかもしれないが……それは頑張ったからこそであって、突然ぽんと生まれるわけじゃない。

「今は退院することだけを考えてね」

 それから彼女と今日起こった学校の出来事についてさんざんと語り合った。

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できること、できないこと バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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