精神体と、僕
バブみ道日丿宮組
お題:僕の好きな結末 制限時間:15分
精神体と、僕
人の思念は形になる。
それはいわゆる地縛霊に近いともいえるもの。
ただ思念なので死んだ人ではなく、生きてる人の気持ちが外に溢れてる。
「……見つけた」
僕はそんな残された想いを回収する仕事をしてる。
「ーーやっとついたの?」
「むしろやっと起きてくれたのか」
背中にずっしりとくる重みと、柔らかさ、そして温もり。彼女が彼女であるという思念が確かに背中にある。
「回収お願いできる」
「おっけー」
僕の背中から降りた彼女は、スキップで光る玉へと向かう。
光の玉ーーこれが思念である。
「今回のは普通みたいだね? いや恋愛って感情だから普通じゃないかも?」
光の玉に手を入れた彼女が首を傾げる。
いつ見ても神秘的だ。彼女が思念の集合体なのは最近知ったことだが、人が光を操れるなんてとても不思議。かつて見えたオーロラなんかももしかしたら作れるかもしれない。
「対処できる?」
「うんうん、普通のと変わらないと思うよ。でもーー」
振り返り、
「本人を探さないと違う光に包まれると思う」
やっぱりか。
思念に残るということはすなわち心がかき乱されたということ。
つまりは本人が復讐心に燃えたり、本人以外が嫉妬の業火で自分を焦がしたりと散々な状態になってるかもしれないということだ。
「場所はわかる?」
「当然!!」
胸を張った彼女の身体に光が包まれてく。
「じゃぁ行こっか。また眠る?」
「ううん、エネルギーを回収しちゃったからカロリーを消費しないとね」
あぁと僕は頷く。
もっとも光を吸収したところで太るようなことはないとは思う。
「どうしたの? お腹すいた?」
「なんでもない。なんでも……ないんだ」
僕がもっと早くこの仕事を始めていれば、幼馴染は消えなくて良かったのかもしれない。
「泣いてるの?」
「どうかな? ハッピーエンドは難しんだなって」
「なにそれ!?」
彼女の指が僕の目元にこぼれた涙の雫を拭う。
「みんなが幸せになるようにーーそれが僕の願いだよ」
「うんうん、私はそのための精神体だよ」
差し伸ばされた手を掴み、僕らは外へと出た。
精神体と、僕 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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