化け物
バブみ道日丿宮組
お題:元気な幻覚 制限時間:15分
化け物
「なっ……」
確かに轢いたはずだった。
だが、バッグミラーに写る人影はゆっくりとこちらへと歩いてきてる。どこにも損傷が見えない。こちらのほうがダメージがでかいか?
「っ……!」
なんてことだ、一撃で仕留めきれなかった! 決意を込めてアクセルを踏み込んだのに……、アクセルで殺せないなら、バッグで轢き殺すしかない。
そう思ってギアを入れ替えようとして気づく。
そこにあったはずのものは消え去り、
「どうして……?」
太い骨がそこにはあった。
真っ赤に染まった皮のある骨は生きた人間から抜き取ったというほどにエネルギーが禍々しくある。それにニオイも擦り傷時に臭う生臭さのようなものが鼻にきてる。
「えぅ……」
ニオイに気がついた時、私の視界はなにかによって支配されてた。車の中身は、赤い肉片へと変わってた。感触も車のものではない。
吐き気をもよおしながら、私は急いで外に出た。
外は車の中と違って、いつもの普通な風景。
違うとすれば……迫ってきてる化け物だろう。あれは人間じゃない。人間は車に追いつけないし、轢かれて無事なままでいられる肉体を持っていない。打ちどころがわるければ、簡単に死んでしまうーーそれが私たち人間。
「く、くるな」
化け物を見つつ、後退する。
この先にはコンビニがあったはず……、そこでなにか武器を買うか、店員に警察を呼ぶようにお願いしてもいい。
1人は駄目だ。1人ではあれには勝てない。
もう何人も友だちが奪われた。
ここで私が死んだら次は誰が狙われるだろうか……誰を犠牲にできるだろうか。
「うぅ……」
代わりなんていない。今あいつが狙ってるのは私だ。
化け物は車に乗ってた時はかなりの速度が出てたのに、歩きヘ変わった私に追いついてこない。なぜだろうか? 車でダメージがやっぱり入ってる?
いろんな考えが浮かんでは消えて、やっとコンビニへとたどり着いた。
「ーーすいません、警察を」
と呼ぶ私の声は続かなかった。
だって、店員は化け物の顔に、
「どうじまじだが」
私はたまらず駆け出した。
どこでもいい。人がいるところで逃げなければーーそうして一歩踏み出した時、私の視界は知らない天井を見つめてた。
化け物 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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