おじいちゃんの彼女

バブみ道日丿宮組

お題:薄汚い学校 制限時間:15分

おじいちゃんの彼女

 廃校が決まったことだし、せっかくなのでと学校に来てみた。

「……」

 学校にはきたことがないのでこれがはじめて。

 誰もいない下駄箱、静かな廊下、哀愁感が漂う教室。

 とても神秘的だった。

「ん……」

 ほんらいであれば、いたであろう教室には残滓が残ってる。

 習字、ベルマーク活動、日直、予定欄、お知らせ、お絵かき、折り紙。

 最近までやってたことがよくわかる。

 私は、私だけが中学2年だった。

 他は高校生であったり、小学生であったり、幼稚園児であったりする。

 いつも騒がしくて、勉強には集中できなかった。

 そういう理由もあって、通うのをやめてた。もちろん、家で勉強してる。きちんと試験も家で親の監督の中こなした。

 そして行きたい高校を見つけた。

 勉強と読書しかしてこなかった毎日だけど、

「……ふぅ」

 学校ってやっぱりいいものだね。

 落ち着きをすごく感じる。誰もいないはずなのに、誰かがすぐ隣にいるようなそんな感じ。実際に隣りにいたらホラーだけどね。

 一ヶ月間も放置されてたこともあってホコリが多い。おじいちゃんの部屋がこんな感じかな。本がたくさんあって、立派な人形が飾ってあった。

「ねぇ、そろそろ出してくれる?」

「ごめんね」

 カバンを開けると、一体の人形が飛び出してきた。

「ふーん、ここが学校なの」

 ない胸を張ってるのは、おじいちゃんが残してくれた人工生命体である彼女。成長することはなく、太陽エネルギーを得て活動してる。

「さっぱりしないわね」

「そうかもね」

 学校に通わなかった理由には彼女が関係もしてる。

 図書室と化したおじいちゃんの部屋に飾ってあった彼女は、私がカーテンをあけたことによってエネルギーを得て再活動した。

 歴史は深くおじいちゃんのおじいちゃんがいたころから我が家にいるらしい。つまりすっごいおばあちゃん。そういったら、怒るからいわないよ。

「お別れも済ませたなら戻るわよ、今日の勉強はまだ終わってないのだから」

「わかってる。もうスパルタなんだから」

 彼女はとても物知り。記憶というのがどこに記憶されてるのかはわからない。けれど、彼女は私の知らない数多くのことを知ってる。

 だから、先生なのだ。そしてかけがえのない友だちでもあった。

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おじいちゃんの彼女 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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