あげられるもの

バブみ道日丿宮組

お題:商業的な借金 制限時間:15分

あげられるもの

 誕生日という祝日にならない日は家にいることに限る。それが例え登校日だったとしても、誕生日なのだからと引きこもりを強行する。

「……誰だよ」

 もっとも誰かがこないという日ではないので、チャイムは鳴る。配達かなにかかもしれないと、玄関へ向かい、開けてみる。

「なんだ、お前か」

 そこには幼馴染が制服姿で立ってた。

「今日は休みじゃないよ。はやく着替えて」

「誰から聞いたんだ?」

 いや……それを知ってるから幼馴染ともいえる。

「ほら、一緒に行ってあげるからはやくして」

「行く気がないのだが?」

 ぷくりと幼馴染の頬が膨らむ。こんな姿を他のやつが見たらきゅんとするんだろうな。僕は見慣れてるからしないが……。

「誕生日プレゼントあげるから」

「えっ? そうなの?」

 疑問しかわかなかった。

 そういや、幼馴染からは毎年祝いの品をもらっていたっけ……。

「今年は特別なものをあげたいから、一緒にいこ」

 特別なものね。欲しかったものは一切ない。

 幼馴染が僕にあげられるものとすれば、

「会社くれるの?」

 それ以外頭に浮かばなかった。

 彼女は会社の取締役の1人。ただ……商業的としては売れ行きが悪い。最近かなりの額の借金をしたと聞いてる。そんな会社をくれるというのか?

 まさかね?

「そんなのあげられるわけないじゃない。でも、業績の持ち直し方は思いついてるからそれで上場したら入れてあげてもいいわ」

 入れてあげるというのはおそらく社員としてだろう。いわゆるコネというやつか。

「働きたくないしな」

「じゃぁ学校で勉強しよ」

 いいところに入りたければ、いい学校を卒業する。それは死んだ父親がよく言ってたことだ。

「勉強なんかしても死んだら意味がない」

「もう……言い訳ばっかり! いいから、着替えて!」

 強行突破という感じに幼馴染は僕の脇をすり抜けて部屋の中へあがった。

「……プレゼント、あとの方がいいよね」

 ベッドの前に移動した幼馴染はスカートを抑えてこちらを肩越しに振り返る。

「後とか先があるものなのか? なら、鮮度がいいうちに頼む」

「うーん、でもあとのがいいかな。はじめてはじっくり時間をかけたいし……」

 後半はぶつぶつ何を言ってるかわからなかった。

 時間がかかるということは料理でも作ってくれるのだろうか? 絶品とまではいかないがそこそこうまいのは事実。それは誕生日プレゼントに当てはまるかもしれない。

「……なら、行こうかな」

 僕はそうして幼馴染に手伝われながらまだ新品に近い制服に着替えるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あげられるもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る