軟体動物

バブみ道日丿宮組

お題:意外!それはぐりぐり 制限時間:15分

軟体動物

 宇宙から来た生物といわれてるのは、タコやイカらの軟体動物。

 あれらを最初に食べた人間は勇者とも呼べる。なにがどうしたら、あれを口にしたいと思うのだろうか。私にはできそうもない。

「ねぇ、食べてくれないの?」

「それは君が買ったのだろ? 君が食べるといい」

 先程から、その宇宙生物であるはずのタコを利用したたこ焼きをほっぺたに友だちがぐりぐりと押し付けてきてる。

「えー、一緒に食べようよ」

「一緒に食べてるではないか」

 私は私が買った焼きそばを膝下に置いてる。友だちはたこ焼き、私は焼きそばを食事中というわけだ。

「それは違うよ。わたしが食べてるのを君が食べて、君が食べてるのをわたしが食べるの」

 どういうことだろうか。もしかしなくても食べさせ合うということがしたいのか?

「困惑しないでよ。こんなの恋人だったら当たり前のことだよ」

「そうなのか?」

 世間に疎い私が知らないことはかなり多い。とくに恋愛というものは本で読んでもよくわからない。

 友だちはそれは大変だと、こうして恋人役になってもらった。それからというもののこういったアクションがすごく増えた。それは周りの人が若干引くような感じだ。

 恋愛というのがわからないこともあって、どれが正しくてどれが正しくないか判断がつかず、私はリアクションに困ることがしばしば。

「ほら、食べて食べて」

 最近わかったことは、しつこい要求にはさっさと応じたほうがいいということだ。口をあけるとたこ焼きがすぐに入ってきた。

 友だちは汚れた私の口元をというより、友だちが汚した口元をハンカチでとってくれた。

「美味しい?」

「ゲテモノの味」

 嫌いじゃないが軟体動物は食べるのに抵抗がある。

「君ぐらいだよ、そういって食べないのは」

 ほら見てと、友だちは食堂に視線を向けた。その視線を追うと、誰もがたこ焼きやら、貝の入った料理などを口に運んでる。

「好き嫌いは誰にでもあること。なら、私が軟体動物を口に運ばないのも選択肢としてあり」

「そーだね。そこは違わないと思うよ。でもねーー」

 と友だちはまたたこ焼きをこちらに向ける。

「やっぱり食べさせあえる料理は素敵だと思うの」

 なるほど。そうなのか?

 それから私はお腹いっぱいになるまでたこ焼きを口に入れられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

軟体動物 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る