兄への投資
バブみ道日丿宮組
お題:許せない投資 制限時間:15分
兄への投資
金でどうにかなるというのであれば、もちろんそのとおりだろう。
家で働いてる執事たちは賃金というもので従わされてる。もっとも父の脅威じみた性格から従う以外の選択肢はとれないだろう。
僕は父にそんな投資はされてない。
子供の頃からずっとそうだ。才能のない人間を父は求めてない。いつだって才能のある妹が人目を引く。
「どうしたんですか?」
「考えごとがあってね」
とはいえ、子供の1人であることには変わらない。愛はなくても存在価値はある。
「ちょっと遠出することになるから、家のことは頼むよ」
頼まれなくても妹はなんとかするだろう。父から会社の運営をいくつか頼まれてるし、生徒会長として学生からも頼られてる。
そんな妹と毎日比較されてはいたものの、やれることを指示されるのはとても気分が良かった。あの父が僕に頼みなんて、明日世界が滅びるかもしれない。それぐらい衝撃度は高い。
「どこかいかれるのですか? なら、私もついていっても?」
ベッドに腰掛け、足をぶらぶらさせた妹は当然のように訪ねてくる。
父からの愛はなかったが、妹からの愛は深かった。毎日のように毎夜ベッドに入ってくるし、お風呂にも入ってくる。
成人に近い僕らがそんなことではダメだと何回もいってるのだが変わることはなかった。間違いは起こらないと思ってるが、妹は違うようだ。
「会社の運営とかもあるだろう? なら、僕についてくるのはいけないよ」
「ひょっとしてお父様の指示ですか?」
当然その考えにいたるだろう。僕が僕としてやることはほとんどない。やってるとして飼ってる猫に餌をあげるぐらいだ。そんな僕が進んでどこかに行くということは想像できない。
「ちょっと頼まれごとをしてね。お金ももらったし」
雑用という投資をさせられたようなものだ。お前にこの家は相応しくない。そんなことをいうようにね。
「それなら私がついていっても問題ありません。兄さんは私がいないと何もできないのですから」
「そうだね……」
「お父様に話してきます。兄さんは誰のものかと証明してきます」
そういって妹は部屋を出ていった。
残ったのは桃の甘い匂いだった。
兄への投資 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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