過去と未来のスコップケーキ

 猫のお菓子屋さんの店先には、開店前からお客さんの大行列。保冷バック持参のお客さんも、かなりいる。

 あまりの大にぎわいに、NNNニュースのレポーターが取材に来ていた。



レポーター「こんにちは。NNNニュースです。今日は大行列の猫のお菓子屋さんまで来ています。それでは、先頭の人にインタビューしてみましょう。お客さまは、いつから並んでいるのですか」


客A「昨日、猫のお菓子屋さんに来たら『本日臨時休業』の張り紙があって、それを見て、すぐに並び始めました」


レポーター「すぐにですか?」


客A「はい、すぐにです」


レポーター「それじゃあ、昨日は、家に帰らなかったのですか?」


客A「はい」


レポーター「すごいですね。それだけ、今日のお菓子への期待が大きいのでしょうか。こちらのお客さまは保冷バックを持っていますが、あなたも家に帰らず、昨日から並んでいるのでしょうか」


客F「昨日から並んでいますが、一度、保冷バックを取りに家に帰り、すぐに戻って並びました」


レポーター「保冷バックですか? 徹夜用の寝袋とかではなくて?」


客F「はい。寝袋じゃ、アイスケーキが溶けちゃうじゃないですか」


レポーター「ふむふむ。お客さまは、今日の猫のお菓子屋さんの日替わりお菓子は、アイスケーキだとお考えなのですね」


客F「もちろんですよ。ほかに、どんなお菓子があるんですか」


レポーター「ふむふむ。それで、そちらのお客さまは、今日のお当番はだれだとお考えですか」


客H「決まってるじゃないですか! ホラア……」


 お店から、赤ちゃん猫といっしょにおっきな猫さんが出てきて、『Closed』 のプレートをくるりと回して、『Open』にした。


おっきな猫「お待たせしました。猫のお菓子屋さん、開店します」

 

 大行列のお客さんたちから、いっせいに拍手と歓声が上がる。 



 今日のお当番は、そうです! 幾万年の時間を超えて、ホラアナライオンさんたちがお当番!



 察しの良いお客さんたちが考えた通り、今日の日替わりのお菓子はスコップケーキアイスクリーム。



 Cat has nine lives.

 猫は九つの命を持つ。



 ネコ科のホラアナライオンさんたちも、ちゃんと九つの命を持っている。

 その上に、猫のお菓子屋さん特製の五万年の時間をはさんだシベリアが届いたんだもの。

 

 そりゃ、ホラアナライオンさんたちだって、時空を超えて、お菓子屋さんのお当番をしたくなるってもんですよ。



 スコップケーキは、大きなスプーンでスコップみたいにすくって取り分けるケーキ。

 本日のスコップケーキは、ほうじ茶とバニラのアイスクリーム。小豆やフルーツの他に、ちっちゃくちぎったシベリアもトッピング。

 小さなスコップのおまけも付いているよ。



 シベリアの永久凍土から五万年前の時間を掘り起こすように、アイスケーキの中から懐かしい時間、遠くに行ってしまった時間を見つけてくださいな。

 もしかしたら、未来の時間も見つけることができるかもしれないよ。


 だけど、くれぐれもご注意を。

 あんまり乱暴にスコップを扱うと、みんな壊れて台無しになりかねない。

 大切なものほど、もろいガラスの壊れもの。

 壊れてしまえば、二度と元には戻らない。


 くれぐれも壊してしまって後悔したり、壊れたガラスの破片で怪我をしたりしないでね。

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