女王さまのパン耳かりんとう
開店二日目のお当番は、きつねこちゃんです。
きつねこちゃんは、茶白猫の女の子。
厚切り食パンの色をしている。
こんがり焼けたきつね色とふわっふわの真っ白なパンの色。
それで、みんなは「きつね」と「ねこ」をくっつけて、
「きつねねこ」→「きつねこ」
きつねこちゃんと、呼んでいる。
きつねこちゃんは本当は、お菓子屋さんよりパンのお店をやりたい。
おとなりのウサギのパン屋さんみたいにいろんなパンがあるお店じゃなくて、きつねこちゃんと同じ色をした食パンの専門店。
なぜかって?
だって、お菓子には耳がないのに、食パンには耳があるんだもの。
耳があるから、食パンは悩みごとを、なんでも聞いてくれる(かもしれない)。
お菓子は美味しいけれど、耳がないから悩みごとを聞いてくれない。
きつねこちゃんには、それが不満。(きつねこちゃん
だから、食パンの専門店を開きたい。
それも高級食パンではなくて、悩みごとをなんでも聞いてくれる食パンの耳に特化したお店をやりたい。
でも、やっぱり、猫はお菓子屋さん。今のところ、猫のパン屋さんの開店予定はないし。そもそもおとなりが、ウサギのパン屋さんだしね。不満ばっかり言っていても
きつねこちゃんは、三日三晩お昼寝しながら徹夜して、いっしょうけんめい考えた。
そして、ついに名案を思い付いた!
お当番の日の朝、きつねこちゃんは、いそいそとおとなりにパンの耳を分けてもらいに行った。
パン屋さんにはなぜだだか、このお話の作者の水玉猫がいた。
そういえば、お菓子屋さんのお当番を三毛猫のミケちゃんに代わってもらったって、聞いたけど……。
きっと、パンの耳に悩みごとを打ち明けているのだろう。人生は悩みが尽きないからね。きつねこちゃんは独りごちして、パンの耳への推し愛をいっそう強くした。
パンの耳をいっぱい抱えてお菓子屋さんに戻って来たきつねこちゃんは、そのあと、どうしたと思う?
パンの耳を油で揚げてお砂糖をまぶして、パン耳かりんとうを作ったのです。
それもね、ただのお砂糖じゃなくてシナモン入りのお砂糖。
なぜ、シナモンなのか?
甘いだけじゃないのよ、猫も、女の子も。
マザーグースの童謡にもあるでしょ。
Sugar and spice
And all that's nice,
That's what little girls are made of.
女の子は、お砂糖とスパイスとすてきな何かで、できている。
だから、ピリッと、シナモン風味。
シナモンはスパイスの王さまといわれている。
きつねこちゃんは女の子だから、王さまではなくて女王さま。
それで、本日のお菓子は『女王さまのパン耳かりんとう』とあいなりました。パチパチ(拍手)
ほら、ちゃんとパンの耳は、きつねこちゃんの不満と悩みを解決してくれた。
悩み不満のあるかたは、女王さまのパン耳かりんとうを召し上がれ。
悩み不満を聞いて、それをちゃんと解決してくれる(かもしれない)から。
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