第114話 紫
真冬の空に一匹の蝶
その羽の紫がやけに気になって
見るとはなしに見ていた
吹き付ける雪混じりの風
逆らうように飛ぶ蝶を
まるで嘲笑うみたいに
さらに凄みを増す風が
蝶の行く手を阻んだ
ふらふら揺れる紫
風に押し戻されては先へ向かい
また流されては飛んでいく
その必死さが胸に痛くて
突風についにバランスを失い
力なく堕ちてくるその体を
右手に受け止めて
ひと思いに握りつぶした
この手に残るのは
バラバラの紫と
やり場のない虚しさで
血が流れるわけではないのに
妙に生々しい殺害の感触が
いつまでも掌に残っていた
風はいつまでも吹いていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます