第5話 歩き出すため


冷えたアスファルトの上

膝を抱えている

その瞳からは

光が消え去って

目に映るものなんて

何もない


何もない世界


開くことのない扉

錆びついた鍵穴

扉の向こうの景色

扉が隔てるもの 

それでも探している

鍵を


扉を開く鍵を


手に触れたものを

胸に抱きしめる

錆びた鉄の匂い

それは鍵の形をしていて

瞳は光を取り戻す

歩き出すため


新しい世界へ

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