君の瞳に映る空は、今でもまだ蒼い
月野夜
プロローグ
僕は、夜が明ける前の高尾山にのぼっていた。
きらびやかな装飾を施したように、黒のベールに散りばめられた星々は、僕の焦燥をいくらか紛らわせてくれた。
徐々に開けていく闇夜にまぎれて、鳥たちが静かにさえずりを始める。
山はもうすぐ、目覚めの時間だ。
木の葉のすれ合う音と地面の土を踏みしめる音、僕の息遣いが、耳に反響する。上がった息を整えるため、膝に手をつき腰をかがめる、全身を収縮させるように、深く深呼吸する。
はやる気持ちを抑える、抑えたところで心は沈む。
ここには僕を待つ人はいない。
分かっていたのにどうしても僕はここにやってこなければならなかった。
君のいなくなった景色に耐え切れず、僕はひとりで記憶の中に残された君を追い続けていた。
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