100万円使ったら死ぬ俺。

@onoe

第1話 残高99万円

書き方が分からない。

でも、どうせ後から修正できるから大丈夫だろう。

そうやって生きてきた。

テストの点が悪くても死ぬわけじゃない親が怒っても死ぬわけじゃない年金未払いでも死ぬわけじゃない。

でも、金が尽きたら俺は死ぬ。いや、なんだかんだ死なないと思うから心の中では「死ぬという選択肢も今までに比べて現実味を帯びてくる」くらいなんだけど、分かりやすいエンタメを意識するなら死ぬと言い切った方が良い。と思う。

こんなだから、大学の授業をサボりにサボって留年が決定し、もう一年頑張っても卒業できる気がしなくて退学した。その後は、腐れ縁の友人とほとんど他人の3人でルームシェアしてフリーターを始めた。最初の半年は普通に働いたが、月一で体調不良と言って欠席していたら店長に説教されたので辞めたのが去年の10月。

「お年玉とか預けてた口座あんたに渡すわ」

母からLINEでメッセージが来た時は驚いた。あ、ちゃんと返ってくるんだ、と思った。人間も悪い奴ばかりではないな……俺と違って。

「おばあちゃんが大学の時、仕送りくれてたよ。言ってたっけ?」

ハリーポッターで銀行の金庫を開けたシーンを思い出す。死んだ親が残した金貨が山のようにじゃらじゃら出てくるのだ。親もばあちゃんも生きてるし俺はマグルの穢れた血なので、流石に山のような金貨ではなかったが、バイトしてた頃と合わせて貯金で生活することにした。俺はその場で少しでも楽な方を選ぶ。いつ死んでもいいように。努力が報われるか報われないかはまた別の機会に書くとして、努力の途中で事故死する可能性があるから、努力はしないに限る。

と、俺の努力不要論はさておき、今日は5月31日。ルームシェアの家賃(4万円)を引き落としておかなければいけない。コンビニでモンスターエナジー(緑)と、なるべく身体に悪そうな菓子パンを買って、ついでに金を下ろす。

『99万〇〇円』

金に興味がないので、下の位は忘れたが、100万を切っていた。

今更、社会不適合者の俺が働けるはずもない。生活保護か宝くじかYoutuberか……。希望の船エスポワールは俺を乗せてくれないが、このアパートの名前はエスポワール。100万円使ったら死ぬ俺。終わりの始まり。

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