放送室でリンクする時②
午前中の休み時間、千恵は廊下側が気になってそわそわしてしまっていた。
―――燐久先生、来るかな?
―――普段の学校生活を見られている感じがして、ドキドキする・・・。
燐久は三年生の理科を担当している。 だから普通は一年の廊下には来ない。 なのに何故か燐久はよく一年の教室を覗きに来るのだ。
―――でもどうして一年の教室を見に来るんだろう?
しかも嬉しいことに特に千恵のいるクラスを覗きに来る。
―――まさか、私のことを見に来てくれてるんだったりして・・・!
―――放送委員会で一緒なんだから、可能性で言えば有り得るよね!?
―――・・・なーんて、妄想からの特別感もただの勘違いで、実際は平等に他のクラスも見て回ってりしていても分からないからなー・・・。
当然のことながら燐久が来れば少なからず注目を集めるし話題にも上がる。 他のクラスではそういったことを聞かないため、おそらくはこのクラスに何かあるのだろう。
「千恵ー!」
近くにいた友達が報告にやってきた。
「千恵! 燐久先生が来たよ!」
そう言って廊下を見る。 一気に胸が高鳴った。
「本当だ! やっぱり燐久先生、いつ見てもカッコ良いなぁー」
何故来ているのか分からなくても、勉強で疲れた一時に燐久を見ることができるのは幸せだった。
どうせなら一言喋ってでもほしいところだが、燐久はかけられた挨拶に返事する程度で自発的には何か話したりすることはないのだ。 うっとりしている千恵に友達が言う。
「燐久先生って、半年前に来たばかりだよねー」
「そうだねぇ」
「すっかり女子生徒から人気者だよね。 やっぱり男は顔なんだよ!」
突然現れたイケメン教師。 ところどころ気になる言動も含め、謎だらけだった。 だがそのミステリアスなところも千恵にしてみれば魅力の一つだと思っている。
「燐久先生のいいところは顔だけじゃないよ? 性格もいいんだから!」
「はいはい。 授業も担当じゃないし放送委員会でもないし、私は燐久先生との共通点がないから分からないんだぁ」
燐久は少し教室の様子を見るだけで、すぐにこの場を去っていった。
「え、燐久先生もう行っちゃうの!? 寂しい・・・。 もっといてくれてもいいのに」
「また明日になったら来てくれるって。 それに放送委員会なんだからすぐに会えるし、誰よりも身近にいるでしょ?」
「そうかもしれないけどさぁ・・・」
励まされていると声をかけられた。
「千恵さん」
「うん? 瑛士(エイジ)くん?」
「今朝放送で流していた曲、凄くよかったよ。 よかったらそのCD俺にも貸してくれない?」
話しかけてきたのはクラスメイトの男子だった。 同じ放送委員会でもある。
―――最近よく瑛士くんから声をかけられるなぁ。
そう思うも特に気にすることはなかった。
「あれは好きな曲なんだ。 褒めてくれてありがとう。 是非貸すよ!」
「ありがとう。 楽しみにしてる」
少し会話を交わすと瑛士は離れていった。 それを隣で聞いていた友達が言う。
「瑛士くんは絶対に千恵のことが好きだよねー」
いつも友達は千恵を茶化すように言う。 だがそれを受け入れることはできないのだ。
「そんなことを言われても、私は燐久先生一途だから」
「瑛士くんもカッコ良いのに勿体ないなぁー」
話していると次の授業が始まるチャイムが鳴った。
「千恵! また後でね!」
みんな席に着き始める。 千恵も授業の支度を急いで始めた。 だがチャイムは突然途切れたのだ。
「何だ?」
「どうした?」
教室中がざわついて、立ち上がってキョロキョロとする者もいた。
―――一体どうしたんだろう?
千恵も疑問に思っていると突然燐久の声が放送から聞こえた。
『Rewind』
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