第18話 やりたいことやるべきこと
……? 何が起きた?
阿多谷が屋上に飛び…飛び…飛びああああああああああああああああああああああああああああああああああ……あ
死んだ。
人が死んだ。
下、に人があ。
「とりあえず、下見ようぜ」
「……」
向井間君は我先にと屋上のフェンスへ歩いて行ってしまった。
動揺してない! ?
人が死んだのに。
……見たくない。
けど、確認しないと。重い足取りを一歩、一歩動かした。
今も恨みがあるから意図的にやっているという訳じゃない。
命の危機だからこそ、平静に保てない。この下で、惨状が出来てると思うと……。
「えっ! ? 」
「くはは。見ろよ」
阿多谷は死んでいなかった。クッションマットを何故か敷かれていて、無事でいた。
実際に、死んでくれと思った事だって有るには有る。けど、いざ死のうとしたのを目の当たりにして、僕は素直に喜べ無かった。
寧ろ今はほっとしている。例え、客観的な罪になるものでは無いとしても。
けれど、向井間君は。
「あいつの間抜け面」
わからなくなった。
僕のためにやってくれたんだよね? だったら多少やり過ぎても……。
「折角、助けてやったのに何もわかってない顔だぜ。いやぁ、万が一死ぬかもしれないから用意しておいて、正解だったな。しかしマットから外れて死ぬのもそれはそれで愉快だな。お似合いの最期だ」
向井間君は、死ぬ想定で、阿多谷を追い詰めたのか?そこまでしなくても……。
「まぁ、流石にまた死のうとするなら、責任持てねぇし、管轄外だ。見たところ気力は暫く戻らなそうだし、大丈夫そうだな。救えねぇ奴で無いことを祈ろう。だが、奴の死ぬところを阻止するのは、面白そうだな。死に急ぐなんて本当に人間かよアイツ。いや、最初から 人形 だったな。はっはははこれは傑作だ。! ? 」「ガッギン! 」
考える間もなく、僕は透君の胸ぐらを掴み屋上のフェンスに追いやっていた。
「おいおい何の真似だ? 」
「……ど……て」
「ん? 」
「どうして、そんなこと言えるんだ! 」
泣いていたと思う。感情も不安定だ。阿多谷のためにという考えはなかった。
ただ、人の最低限の扱いを向井間君はしていない。
そう思い、咄嗟に手が出てしまった。人を人形なんて言うのも、どんなことがあろうといけないことだ。
「わからないな。お前の加害者であり、それもえげつないことを。非人道的なことをしてきた奴だ。そんな奴の為にお前は怒っているのか? 」
「そんなんじゃないよ。ただ阿多谷だって、一応人間だ。それを蔑ろにしていい理由は」「有るよ」
「? 」
「奴は人でなし。それで充分。今まで人を人とも思ってもいない奴が一時の罰で、終わるなんて生温い。これからは奴が地獄を見る番だ」
「……嘘ついてるよね。透君」
「? どうしてそう思う」
「僕が止めても、阿多谷を追い詰めるのを止める様子ではなかった。普通、こういう事は、当人の気持ちを考えるもののはず……。だから可笑しいんだ。向井間君。もしかて、自分の為にやってる? お願いだ、答えてくれ」
「……ッ。フフ、ハハハ。何を今更。根本的には、人間誰しも、自分で、やりたいことをしてるだろ。にしても、僕が止めても、阿多谷を追い詰めるのを止める様子ではなった。ってお粗末な想像にも程があるだろ。それで、結局坂井は、阿多谷をもう許すのか? だったら、阿多谷の為にだな。いや、慈愛にあふれているねぇ」
「そんなんじゃない! ! 」
「だろ? あんなろくでなしの為なんて反吐が出るよな? そうなるとさぁ、坂井だって、自分の為になるってことになるぞ」
「! ? 」
「つまり、自分が不快に思うから止めろってことだろ。だったらさ、坂井に止められる筋合いだって無いわけだ。これから俺が何をしようもしないも。阿多谷はゴミだ。ゴミに何しようが、勝手だ」
「それでも、駄目だ! ! ! 確かに僕は阿多谷を今でも許してないし、許してたまるかと思っている。紛れもない屑だよ。アイツは。けど、それでも、やっていいことと悪いことはある。向井間君がやろうとしていることは悪いことだ」
「抽象的だな。何がダメなんだ? 」
「命を弄ぶことだよ」
「命を弄ぶことをやった奴でも? 」
「そうだよ」
「わからないな。じゃあ何故、屋上にいるとき、阿多谷に手を出した。ちゃーんと頭踏んでたよな? もしお前が止めるべきと考えていれば、あんなことやらなかっただろう? お前だって命を弄んでいるだろ。そういうとんでも理論で言ってるなら、間違えねぇな。命を弄べば、守られる対象。命を弄び得だな。それに、お前阿多谷が飛んだ時、おとなしかったよな? あの時、迷ったんじゃないか? ゆるせないない感情と清々したという感情が一緒に有った。暴走するタイミング遅いんじゃないか? 」
「っ! ? 」
そうだ。僕も人に言える立場じゃない。
さっきのモヤの正体はそれだ今になって気づいた。
けど、それでも……。
「……そうだね。だけど、阿多谷が死のうとして、気づいたんだ。例えどんな理由があっても、誰かを追い詰めていい理由にはならない。それを止めるのも、僕のように、間違いを犯した人でも、資格なんて必要はない。寧ろ僕が形だけでも、許さないと、阿多谷は壊れたままだ。流石に心から許すの無理だけど。阿多谷の過去を汲み取れば、情状酌量の余地はあると思うから」
「ふーん。それで? お前がどう考えようと、勝手だ。そして、俺がこれから阿多谷をどうするかも勝手だろ。それは変わらない」
「やっぱりそこは変わらないんだね。じゃあ、屋上でのことを一部始終で録音しているって言ったら? 」
「……言ったら? って言う仮の話に何の効力も発生しないぞ? 嘘でもそこは持っていると誤魔化せよ。で、有るの? 」
「……ここのポケットの中にある」
「気づいていないんだな。俺と坂井で屋上に行く時、後ろの位置にいたこと。あの時ポケットからカチャカチャ音もなく、階段等で、ポケットを気にする素振りも一切見せなかった。それなのにどうやって信じれと? 物を見せないとな」
「……」「無いんだな」
「……頼むから止めてよ」
「別に、何もしねぇよ」
「えっ! ? 」
「あることを確かめる為にやったまでだ。とりあえずは、憂さ晴らしは出来たし、阿多谷に危害を加えるつもりは無い」
「確かめていたってことって? 」
「内緒だ。それじゃ俺は帰る」
「ああ、ちょっと待って」「なんだ? 」
「向井間君。僕は幻滅とかしてないから。向井間君だって辛い過去があることを知っているから。家にはいつでも来ていいからね」
「いや、別に行く気無い。」 「あ……ああ、そう。あ、後、向井間君が、真人間になるの僕は諦めて無いからね」
「はっ? 戯れ言は済んだか? 」
「ああ、後最後に、僕も向井間君と同じ学校に通うから」
「教えろってか? わざわざ面倒事背負いこむなんてごめんだね。それに、進学なんて俺は一言も「いや、マスコミの方? にたまたま進学校聞いたから大丈夫だよ」
蔵元。あの野郎。「チッ……勝手にしろ」
「あ、そこは嘘でも誤魔化せよじゃないの? 」
「うるせぇ。帰る」
とりあえず坂井は、【使えない】
次は邪魔な存在になるな。
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