#.16 再開
「積もる話は沢山あるが……」
「まずはアイツを倒してからだね」
大剣を抱えたアゼルはオーガから視線を外さずに僕もそれに習って同じ方向に視線を向けて言葉を返す。
僕は【テレポーテーション】で愛剣を転送させると、アゼルの横に並んだ。
片手で魔法陣を起動する準備を整ったのを見ると、アゼルは僕に使って合図を出した。
「遅れるなよ」
「そっちこそ」
2人揃って一気にかけ出す。
僕たちは左右に別れてオーガを挟む。
「
さっきの氷の刃で肌の硬さは充分わかった。僕の放った氷の槍は僕の望んだとおりにオーガを貫いた。
「
横縦、斜めと息もつかさぬ3連攻撃を食らわせると怯んだオーガに対して僕が踏み込む。
魔法陣を展開すると同時に僕も剣を振るった。
「展開――【クリスタルブレード】!」
それは魔術と剣技の合わせ技。
氷の刃を纏わせた斬撃はオーガの首を容易く切り落す程の切れ味を見せる。
オーガの重い頭が地面に首が落ちていく。
「凄い……」
少し生徒たちの声が聞こえた。
戦いが終わって肩に大剣を担いだアゼルは僕に対して悪態をつくように呟いた。
「お前相手を凍らせずに敵倒せたのかよ」
「ドラゴン相手じゃ僕が斬るの待ってくれるほど弱くないでしょ」
それに僕が魔術を使ったというだけでその結末は決まっている。
「何より凍ってないわけがないでしょ」
「うわ、傷口が氷始めてやがる」
アゼルが改めてオーガの死体を見ていると、僕が切り裂いた首と胴の切り口から少しずつ凍結を始めているのを見つけていた。
つまり、僕はどうあっても冒険者には向いていない。
「でも大事なとこは凍ってなかったから今回は許してやるよ」
「どうも」
オーガの角を切り落としているアゼルを置いておいて、僕は見ていた生徒たちの元に戻る。
「……先生すみませんでした」
「下手すれば死んでいたぞ」
「はい」
「強いモンスターに会ってパニック状態になるのはわかる。だけど、外に出るってことは常にそういう危険を孕んでいるんだ」
あまり心配させないで欲しい、とは連れてきた側の僕が言える立場じゃないよな。
まさか、なんて言葉で片付けるにはあまりにも大きいミスだ。次からはウォールで遮った方がいいな。
「それにしてもあの人アル師匠の知り合いですか?」
「あぁ、かつてのパーティーの仲間だ」
シエラの言葉に僕は懐かしいと思いながらもそう答えた。既にあれから1ヶ月が経っているとは思えないのは、先程のやり取りもあってのことか。
「そうなんですね、へぇ……」
どこか目を細めて何かを考えるシエラを僕は他所に剥ぎ取りが終わったであろうアゼルに再び話しかけた。
「アゼルはどこに戻るんだ?」
「あぁ? 俺はユピルガだよ」
「じゃあ、行先は同じだな。ついて行ってもいいか?」
「あぁ、歩きながら話そうか。じゃねぇと日が暮れちまう」
「ケビン、シエラ歩くよ」
「あいつらは?」
「教え子、今僕は教師をやってる」
「まあ、シールの懐きっぷり見てたら似合ってるとは思うぜ」
「何だよそれ」
仲違いで道を違えた筈なのに僕の感じているものは友情で、僕の彼の間の空気は穏やかだ。
思わず可笑しくて笑いそうになる。
「オーガはここら辺じゃよく見るのか?」
「最近見るようになったな、危険だから狩るようにはしてる」
「何でオーガが現れるようになったか、わかるか?」
「いや、理由はわからねぇ」
嫌なことの前兆出なければいいけどそういう訳にもいかないのだろうな。
魔物の移動は災いの前兆、僕たちが帰るまでは何も起きないということを願うしかない。
「そういえば、拠点はユピルガに移したのか、みんなはそこに居る?」
そうして、僕はユピルガにいるであろうかつての仲間たちを思った。なのに、なんでアゼルはそんな苦虫を噛み潰したような顔をしているんだよ。
「シールは出ていった」
「……えっ?」
「会えんのはプリエラだけだよ」
「なんで?」
プリエラが今いないっていうのなら、まだわかる。神官としての仕事をする為にパーティーを一時的に外れて1人で教会に戻るともあったからだ。
だけど、シールにそんなことをしていた記憶はない。それに出ていったというのもおかしな話だ。
「――解散したよ『アルストロメリア』は」
――――
これ、そのうち#.15と結合するかも
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